犬の年齢によってかかりやすい病気や死亡原因には変化があります。
もちろん年齢と関係なくかかってしまう場合もありますが、年齢ごとに発症が多い病気を知ることで「そろそろこの病気が増える歳だな」と備えることができます。
今回は、「年齢ごとに注意すべき犬の病気」と「年齢によって変化する死亡原因」を解説していくので、ぜひ愛犬の健康管理にお役立てください。
「0歳の犬」が注意したい病気と死亡原因は?
ペット保険のアニコム損保が発表した疾病情報の統計データによると、0歳の犬(459頭)の死亡原因は下記のグラフのようになりました。
▼0歳の犬の死亡原因(死亡 3 0 日以内の請求割合)
▼0歳の犬の死亡原因(多い順)
・消化器系の疾患
・全身性の疾患
・呼吸器系の疾患
0歳の犬の死亡原因をみていくと、トップ3が「消化器系の疾患」「全身性の疾患」「呼吸器系の疾患」になっています。
犬に多い消化器系の疾患は、「異物の誤飲」「炎症性腸疾患」「すい炎」「感染性胃腸炎」などがあげられます。
▼これってどんな病気なの?
【異物の誤飲】→ヒモやオモチャなどを誤って飲み込んでしまう。子犬は特に多い。
【炎症性腸疾患】→腸に慢性的な炎症が起きる。原因が特定できないことが多い。
【すい炎】→消化酵素がすい臓自身を消化することで炎症が起きる。
【感染性胃腸炎】→細菌や寄生虫などが増殖して毒素をつくり炎症を引き起こす。
誤飲の場合は無症状のこともありますが、消化器疾患にかかると嘔吐や下痢、腹痛、元気がないといった症状が現れます。
まだ体力が十分にない子犬の場合、下痢や嘔吐が続くと体力を消耗し死亡してしまうこともあります。
異変を感じたら、早めに動物病院で診察を受けることが大事です。
「5歳の犬」が注意したい病気と死亡原因は?
では次に、5歳の犬の注意したい病気と死亡原因を見ていきましょう。
5歳の犬(266頭)の死亡原因は下記のグラフのようになりました。
▼5歳の犬の死亡原因(死亡 3 0 日以内の請求割合)
▼5歳の犬の死亡原因(多い順)
・消化器系の疾患
・全身性の疾患
・腫瘍
死亡原因を見てみると、0歳のときと同じく「消化器疾患」と「全身性疾患」も多いですが、5歳になると「腫瘍」が原因で亡くなる犬がグッと増えているのがわかります。
▼「腫瘍」ってなんですか?
定義は色々ありますが、ざっくり言うと「犬の体内の細胞が自分で過剰に増殖する状態」のことです。
腫瘍は「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に分類され、良性の場合転移することが少なく、悪性の場合転移することが多いです。
犬の腫瘍で多いのは、「肥満細胞腫」「乳腺腫瘍」「リンパ腫」「血管肉腫」などがあげられます。
▼これってどんな病気なの?
【肥満細胞腫】→犬の皮膚に多くみられる悪性の腫瘍。急に進行することもあるので注意。
【乳腺腫瘍】→未避妊の高齢のメスがかかりやすい乳腺組織の腫瘍。良性の場合が多い。
【リンパ種】→血液由来の細胞リンパ球が癌化したもの。
【血管肉腫】→血管を作る細胞のガン。悪性の場合が多く他の臓器への転移も多い。
腫瘍にはいろんなバリエーションがあり、早期の手術で根治できるものから、お薬を使って腫瘍ができる前の体調を目指して延命させていくものまで様々です。
ただどんな腫瘍にせよ早期に発見して、早めに治療計画を立てることが、その後の犬の生活を大きく左右します。
皮膚のしこりやリンパの腫れなど飼い主さんが発見しやすい現れ方だけでなく「なんとなく元気がない」「疲れやすい」など、発見しにくい症状がでることもあります。
愛犬の年齢が5歳に近づいたら「腫瘍」という病気が出てくる年齢だということを、忘れないようにしましょう。
「10歳の犬」が注意したい病気と死亡原因は?
それでは、10歳の犬の注意したい病気と死亡原因はどうなっているでしょうか。
10歳の犬(1,500頭)の死亡原因は下記のグラフのようになりました。
▼10歳の犬の死亡原因(死亡 3 0 日以内の請求割合)
▼10歳の犬の死亡原因(多い順)
・腫瘍
・循環器の疾患
・消化器の疾患
年齢ごとに調査している犬の数が異なるので精度に差があるかもしれませんが、5歳のときと比べると10歳では腫瘍による死亡数がグッと伸びて死亡原因のトップになっています。
また循環器の疾患による死亡数が増えてきているのもわかります。
犬の循環器の疾患で多いのは、「僧帽弁閉鎖不全症」「肺動脈弁狭窄症」「心筋症」「不整脈疾患」などがあげられます。
▼これってどんな病気なの?
【僧帽弁閉鎖不全症】→心臓でドアの役割をしている弁が壊れて血が逆流する病気。
【肺動脈弁狭窄症】→肺から心臓への通り道が狭くなったり開かなくなる病気。
【心筋症】→心臓の筋肉の異常で心臓の働きが悪くなる病気。種類が色々ある。
【不整脈疾患】→脈が不規則に打つ状態。血行状態が悪いと突然死のリスクもある。
心臓病には遺伝などが原因の先天性のものと後天性のものがあります。
後天性の心臓病は上記で紹介した中では「僧帽弁閉鎖不全症」と「心筋症」がありますが、僧帽弁閉鎖不全症はチワワ、マルチーズ、シーズーなどの犬種が発症しやすい傾向にあり、心筋症はレトリーバー系が多いと言われています。
心臓病が進行すると、肺水腫や腹水、失神などが起きて日常生活の質を大きく下げます。
循環器を専門に治療している動物病院は少ないので、愛犬の犬種がどんな心臓病が出やすい傾向にあるのかを早めに知っておきましょう。
「15歳の犬」が注意したい病気と死亡原因は?
最後に15歳の犬の注意したい病気と死亡原因を見ていきましょう。
15歳の犬(3,108頭)の死亡原因は下記のグラフのようになりました。
▼15歳の犬の死亡原因(死亡 3 0 日以内の請求割合)
▼15歳の犬の死亡原因(多い順)
・泌尿器の疾患
・循環器の疾患
・全身性の疾患
10歳に比べると腫瘍や循環器の疾患で亡くなる犬は少なくなっていますが、今まで少なかった泌尿器の疾患で亡くなる犬は15歳になると一気に増えています。
犬がかかりやすい泌尿器の疾患は、「慢性腎臓病」「尿路結石」「膀胱炎」などがあります。
▼これってどんな病気なの?
【慢性腎臓病】→腎臓から尿へ老廃物の排出がうまくいかなくなる病気。
【尿路結石】→尿に含まれるカルシウムやシュウ酸が結晶化され尿管を傷つける。
【膀胱炎】→膀胱の中で菌が増殖し膀胱に炎症を引き起こす病気。
泌尿器疾患で亡くなると聞くとピンとこないかもしれませんが、腎臓が十分に機能できなくなったり尿の排出が阻害されると、排出されるはずだった老廃物や毒素が体に蓄積して食欲不振や嘔吐などの消化器症状や昏睡などの意識障害を引き起こし、死に至ることもあります。
特に高齢になると運動量が減って飲水量が減ったり、腰や足を痛めて水を飲みに行くのをおっくうがったりします。
飲水量が減ると尿量が減って、結石や膀胱炎を引き起こしやすくなります。
高齢になったら飲水量のチェックをしっかり行うと共に、フードをふやかして与える、缶詰をトッピングするなど、食事と一緒に水分が取れる工夫をしてあげましょう。
年齢によってかかりやすい病気や死亡原因にいろいろな差があることがわかりましたね。
年齢を重ねるのも病気になるのも避けられないことですが「この年齢はこの病気が増えてくる頃だ」と意識すると行動も変わります。
愛犬にいつまでも元気に過ごしてもらうために、今回ご紹介した内容をぜひ健康管理に役立ててくださいね。
<参考URL>
アニコム家庭どうぶつ白書2021
>https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202112.pdf
<画像元>
Unsplash
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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