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「犬の混合ワクチンって毎年打つべき?」混合ワクチンは種類が多い方が効果があるの?【動物看護師が解説】

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犬を飼っているとワクチンを打つ機会は多いですね。

その分「ワクチンって毎年打つべき?」や「混合ワクチンの種類の違いって何?」といったワクチンに関する疑問を抱えている飼い主さんも多いと思います。

そこで今回は、「ワクチンを打つ頻度」や「ワクチンを選ぶときの考え方」などを解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

「ワクチン」ってなんですか?

ワクチンは感染症予防のために、病原体から作られた薬のことです。

人為的に病原体を体に入れることによって、その病気に対する抵抗力をつけて感染を予防することができます。

そしてワクチンの作り方は大きく「3つ」あります。

「生ワクチン」は、生きた病原体を弱めて作るので効果時間が長い変わりに、「不活化ワクチン」に比べると副作用が出やすいと言われています。

「不活化ワクチン」と「トキソイド」は、病原体の一部を使っているので重篤な副作用は出にくいですが、効果時間が短い傾向があります。

どちらにもそれぞれメリット、デメリットがあるんですね。

そして混合ワクチンは、この「生ワクチン」と「不活化ワクチン」を組み合わせて作られています。

ワクチンがどんな物なのか、どうやって作られているのか、なんとなくイメージがついたでしょうか。

犬の「混合ワクチン」って種類が多い方がいいの?

では次に、犬の「混合ワクチン」についてお話をしていきます。

「混合ワクチンの種類の違いって何だろう?」「何種がいいのかな?」と疑問をもつ方も多いと思います。

混合ワクチンの種類の違いは「2つ」あります。

①2種~9種、種類によって予防できる病気の数が変わる
②「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」

①2種~9種、種類によって予防できる病気の数が変わる

▼混合ワクチンの種類

ワクチンで予防できる複数の病気をギュッと1本の注射にまとめた物のことを「混合ワクチン」といいます。

2種~9種あり、数字が上がるごとに予防できる感染症の数が増えてきます。

「5種混合であれば5種類の病気を予防できるよ」ということです。

②「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」

もう一つの違いが「コアワクチン」か「ノンコアワクチン」かです。

「感染すると死亡率が高いから打っておいた方がいいよ」と推奨されているのが「コアワクチン」で「生活環境によって選択肢してね」というワクチンが「ノンコアワクチン」です。

「推奨されていないなら打たなくていいの?」と思うかもしれませんが、「パラインフルエンザ」はくしゃみなどの飛沫で感染するので、犬が多く集まる環境では蔓延するリスクがありますし、「レプトスピラ症」はネズミが媒介するので、アウトドアにかける機会が多い犬は打っておいた方が安心です。

このように愛犬が生活する環境に応じて選択をしてあげることが大事です。

では、愛犬に接種する混合ワクチンの種類はどのように決めればよいのでしょうか。

こうしてみると、「予防できる感染症は多い方がよいのでは?」という気がしますね。

それは一利あるのですが、最初にワクチンの作り方で「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があるよ、とお話ししたのを覚えているでしょうか。

・生ワクチン→効果時間が長いが不活化に比べると副作用が起こる可能性がある
・不活化ワクチン→副作用のリスクは少ないが効果時間が短い

メーカーによって違いはありますが、パルボウィルスは生ワクチン、レストスピラは不活化というように、混合ワクチンはタイプを組み合わせて作られます。

そのため、種類が多い方が副作用の起きる可能性というのはどうしても高くなってしまいます。

「予防できる病気は多い方が良い」という決め方ではなく、愛犬の体調(シニアや持病があるか等)や生活環境(レストスピラが流行っている地域なのか等)を比べた上で必要な種類を決めることが大切です。

毎年、愛犬に「混合ワクチン」を接種した方がいいの?

これまで混合ワクチンは、1年に1回の接種が推奨されてきました。

しかし最近、「ワクチンは3年に1回でいい」「毎年打たなくてもいい」といった情報を目にすることが多くなりました。

これは「世界小動物獣医師会」のガイドラインで、ワクチン接種に関して3年に1回を推奨するという情報が元になっています。

それでは、愛犬の混合ワクチンを打つ頻度はどのように考えればよいのでしょうか。

ポイントを「4つ」にしぼって見ていきましょう。

▼愛犬のワクチン接種の頻度を決めるための4つのポイント
①抗体価検査ができるのは「コアワクチン」だけ
②効果が短いワクチンもある
③犬によって抗体の付き方は変わる
④日本は犬のワクチン接種率が低い

①抗体価検査ができるのは「コアワクチン」だけ

近年ワクチンを打った後に、どれくらい病気に対する抵抗力(抗体)が残っているのかを検査できるようになりました(抗体価検査といいます)。

これによって飼い主さんは、「抗体が無ければ打つ」「抗体があれば打たない」という選択肢が選べるようになりました。

しかしこの抗体価検査は、「コアワクチン(表の緑の部分だけ)」しか調べることができません。

つまり、「ノンコアワクチン(灰色の部分)」は抗体が残っているか知ることができません。

抗体があるから安心、次に打つのは3年後と思っていたら、ノンコアワクチンの抗体は無くなっていて感染症にかかってしまうということもあるのです。

②効果が短いワクチンもある

最初にワクチンには「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があり、それぞれ効果時間が違うとお話ししましたね。

混合ワクチンはこれらを混ぜて作られるので、効果時間が長いものと短いものが存在します。

例えば、レストスピラ症は1年ほどで抗体がなくなると言われています。

そのため、生活環境によっては毎年打つという選択肢も必要になります。

③犬によって抗体の付き方は変わる

「世界小動物獣医師会」のガイドラインは、コアワクチンの抗体を調べたところ3年効果が残っていたという調査が元になっています。

この時の抗体は90%以上と高い数字を保っていたようですが、日本で2016年に行われた調査によると3年後には60%ほどに抗体が減ったという結果も出ています。

犬によって抗体がどれくらい体に残るのかは変わってきますし、遺伝的に抗体がつきにくい犬もいます。

そのため一概に「3年に1回の接種で十分」と判断するのは難しいと思われます。

④日本は犬のワクチン接種率が低い

「世界小動物獣医師会」のガイドラインは、すべての動物がワクチンを打ち、「集団免疫(一定以上の人数が免疫を持つと他の人に感染しにくくなること)」が十分できていることを前提に作られています。

しかし下の図を見てみると、日本はワクチンの接種率がとても低いことがわかります。

集団免疫ができるのは接種率が60~70%ほどと言われています。

ワクチン接種率が高い国では、抗体が少なくなっても集団免疫で感染するリスクは下げられますが、日本では集団免疫の恩恵はないので個別でしっかり予防することが大切です。

4つのポイントをまとめると「3年に1回の接種」で問題ない場合もあるし、「1年に1回の接種」がよい場合もあることがわかります。

それと同時に、「3年に1回の接種でよい」という言葉だけが独り歩きするのが危険であるということもわかりますね。

なのでコアワクチンの抗体価検査をしつつ、その年の生活環境に応じてワクチンの種類と頻度を決めていくというのが一番良いのかなと思います。

愛犬にあった「混合ワクチン」を選ぶには?

では、愛犬にあったワクチンはどのように選べば良いのでしょうか。

・抗体価検査をする
・愛犬の生活スタイルから判断する
・愛犬の体調から判断する
・獣医師さんとよく話し合う

抗体価検査をすることで、コアワクチンに関しては必要以上に接種しないという選択肢を取ることができます。

あとはドッグランやドッグカフェなど不特定多数の犬と接触する機会が多いのであれば、5種以上、アウトドアに行く機会が多いなら7種以上というように、生活環境に応じてワクチンの種類を決めましょう。

また、その地域で流行っている感染情報を獣医師さんが知っていることが多いので、獣医師さんに相談しながらどの種類を打つか、期間を空けるかを決めるとよいでしょう。

いろいろと駆け足で説明しましたが、いかがだったでしょうか。

ワクチンは難しい分野なので、一度で理解しようとすると情報が多すぎて混乱してしまいますね。

今回ご紹介した内容をじっくり読みながらワクチン選びの参考にしていただけると嬉しいです。

<参考URL>

犬コアワクチン接種後の経過年数による抗体保有状況の推移
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/69/9/69_538/_pdf

犬のワクチン.com
>https://www.xn--u9j2g3b3jwa9502h.com/infection/?sec01

犬と猫のワクチネーションガイドライン
>https://wsava.org/wp-content/uploads/2020/01/WSAVA-vaccination-guidelines-2015-Japanese.pdf

<画像元>

写真AC

Unsplash

いらすとや

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。