わんことの旅行を
もっと楽しく、
もっと快適に。
メニュー
  • いいね!してね

「ペットの高齢化で進む認知症」早めに知りたい犬の認知症のサインと対策

シェアする

飼い主さんの健康意識の向上や獣医療の進歩によって犬の寿命は飛躍的にのびました。

愛犬と過ごす時間が増えるのは何よりも嬉しいことですが、それと同時に犬の認知症も増加傾向にあります。

老化と見分けがつきにくい犬の認知症ですが、早めに変化に気づいてあげることで犬の負担や不安を軽減することができます。

そこで今回は「犬の認知症のサイン」や「認知症になったときに飼い主さんができること」を解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

どうして「認知症」になるの?

言葉として「認知症」はよく耳にしますが、どういう仕組みで認知症になってしまうのでしょうか。

脳内で作られるタンパク質の一種に「アミロイドβ」というものがあります。

このタンパク質は通常であれば短期間で分解され排出されますが、なにかの拍子に「アミロイドβ」同士がくっつくと排出されずに脳に蓄積していきます。

この蓄積した「アミロイドβ」は脳の刺激伝達を阻害し、脳の認知機能を低下させます。

これが認知症の原因ではないか、と考えられています。

高齢になるにつれて「アミロイドβ」は蓄積しやすいと言われており、犬の認知症の発症年齢と発生率の調査によると11~12歳の犬で約28%、15~16歳の犬で約68%、認知症の症状が現れたと報告があります。

15歳前後で認知症の症状がでる確率が高いので、愛犬がシニアと言われる年齢になったら認知症について理解を深めておくと安心ですね。

知っておきたい「犬の認知症のサイン」

では愛犬に認知症の症状がでているか、どう気づけばよいのでしょうか。

実は犬の認知機能を評価するチェックシートがあります。

▼こんな症状がでていませんか?

・隙間に挟まる/物を避けられない/ドアの蝶番側を通ろうとする
・壁や床、空中など何もない所をぼんやり見つめる
・馴染みのある動物や人を認識できない
・家の中や庭で迷子になる
・光景や音に対する反応が鈍い
・以前より来訪者、家族、他の動物に対してイライラしたり怖がったりするようになった
・近づかれたり、挨拶したり、撫でられることに対する興味が減った
・夜間にウロウロ歩く/落ち着きがない/あまり眠らない/目を覚ましている
・夜間に鳴いたり吠えたりする
・新しいことを覚えにくい/習得しているコマンドや作業への反応が鈍い
・家の中のトイレ以外の場所で排泄する
・外出したいという意思表示が減った
・犬の気を引くことが難しくなった/集中力が減った
・探索をしたりおもちゃや家族、他の動物と遊ぶ頻度が減った
・無目的な歩行や徘徊が増えた
・旋回運動、咀嚼、舐め、ぼんやりと宙をみるといった行動を反復する
・飼い主から離れた際の不安が増えた
・光景や音に対して過敏になったり怖がるようになった
・新しい場所や外出などを怖がるようになった

▼評価方法
なし→0点
まれにある→1点
ときどきある→2点
1日1回/常にある→3点

0~3までの数字で症状を評価し、トータルスコアが「4~15点」だと軽度の認知機能障害「16~33点」だと中度の認知機能障害「33点以上」だと重度の認知機能障害が起きていると評価されます。

老化だと思っていたら実は認知症の症状の一つだったという事もあるのです。

また犬の認知症の発症リスクは1年ごとに1.52倍ずつ上昇するという研究結果があり、今はスコアが低くても来年には気になる項目が増えているかもしれません。

愛犬がシニアになったら行動を細かくチェックしておきましょう。

愛犬が認知症と言われたら、飼い主さんができること

愛犬に認知症の症状が現れたら、私たち飼い主ができることは何があるでしょうか。

認知症は完治する病気ではないですが、色々な方面からアプローチすることで、暮らしやすい空間になったり愛犬に安心感を与えることができます。

今回は「環境面」「行動面」「栄養面」の3つから飼い主さんができることをご紹介していこうと思います。

飼い主さんができること①「環境面からのアプローチ」

愛犬が生活しやすい空間を作ってあげることが目的となります。

▼環境面を整える
・トイレを複数設置する
・床に滑り止めを設置する
・家具の角にクッション材を設置
・室内の障害物を減らす
・家具の配置換えは控える
・家具と家具の隙間をなくす

認知機能が衰えると家具と家具の隙間に入ったまま出てこられなくなるといったことが起こりやすくなります。

室内の障害物や隙間を減らして、愛犬が安心して歩き回れる広い空間を作ってあげましょう。

またトイレの場所がわからなくなったり、膀胱機能の衰えからトイレを失敗する回数が増えます。

愛犬の目に入りやすい場所や行きやすい場所にトイレを複数設置して失敗しにくい環境を作ってあげましょう。

飼い主さんができること➁「行動面からのアプローチ」

愛犬が安心できるように飼い主さんが働きかけます。

▼行動面からのアプローチ
・スキンシップの時間を増やす(声掛け、撫でるなど)
・引っ越しなど大きな変化は避ける
・留守番の時間や回数を減らす
・失敗が増えても叱らない
・愛犬に無理のない範囲で散歩、運動させる
・愛犬に無理のない範囲で遊ぶ
・頻繁にトイレに誘う(失敗する回数を減らしてあげる)

認知機能が衰えるとトイレでない場所で排泄をしたり、覚えていたコマンドができないなど間違えることや失敗することが増えます。

これは犬側にとっても辛いことで、失敗し続けると自信を失ってしまいます。

間違いや失敗をしても決して叱らないようにしましょう。

また、散歩や遊びなどで適度な刺激を脳にあたえることは、認知機能の維持に役立つと考えられています。

投げたものを持ってこさせる、オヤツを探させるなど遊びや運動でも頭を使うような工夫を取り入れてあげましょう。

飼い主さんができること➂「栄養面からのアプローチ」

脳の神経細胞は体の酸化によって損傷を受けます。

抗酸化作用や抗炎症作用のあるDHAやEPAを摂取することで、脳の認知機能の低下を予防、改善する効果が期待できると言われています。

特にDHAは認知症の仕組みで説明した「アミロイドβ」の沈着を阻害する働きがあると言われています。

動物病院専売品のサプリメントなどもあるので、愛犬に気になる行動が現れたら獣医師さんに相談するとよいでしょう。

犬の認知症で大切なのは「相談すること」

愛犬に気になる症状が現れたら、思い出してほしいことが1つあります。

それは獣医師さんなどの動物病院関係者に早めに愛犬の症状を相談することです。

高齢犬の行動の変化に対する調査によると、愛犬の行動変化に気づいている人(407人)のうち誰かに相談した人の割合はたったの29%(119人)でした。

▼愛犬の行動変化を相談したことがある人の割合

「歳だからしょうがない」「老化だから当たり前」と行動の変化を見過ごしていると、症状が悪化してしまったり、実は愛犬が生活しにくくて困っていたということになりかねません。

認知症は早めに気づいて対応することによって、生活の質を高くしたり進行を遅くすることができます。

認知機能のチェックシートで気になることがあったら、早めに獣医師さんに相談しましょう。

認知症は早めに気づいてあげることによって、進行を遅らせたり飼い主さんの困りごとを減らすことができます。

愛犬と楽しく老後を過ごしていくために、今回ご紹介した内容をぜひ参考にしてみてくださいね。

<参考URL>

犬の「認知症」について  鳥取大学共同獣医学科 獣医臨床検査学
>https://vth-tottori-u.jp/wp-content/uploads/2021/04/topics.vol_.108.pdf

高齢犬の行動の変化に対するアンケート調査
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_119/_pdf

神経科「認知機能低下を評価する」の話
>https://so-amc.com/column_detail/entry/369

認知障害症候群の評価ツール
>https://www.purinainstitute.com/sites/default/files/2022-10/DISHAA%20%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB.pdf

ω3 系脂肪酸による認知症予防
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/22/7/22_327/_pdf/-char/en

犬の認知機能不全症、どのように対処していますか?
>https://confit-fs.atlas.jp/customer/acrf35/pdf/Lc2-5.pdf

<画像元>

Unsplash

The following two tabs change content below.
伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。