犬は誤飲が多い動物だと言われています。
「なんでこんなものを食べるの?!」「気づいたら飲みこんでいた」といった、ぞっとした瞬間を経験した飼い主さんは少なくないのではないでしょうか。
誤飲物の中には、犬の命を奪う危険な物もありますが、その多くは特別なものではなく私たちの身近に置いてあるものです。
今回は犬が誤飲をすると命に関わる危険な物を7つご紹介するので、家に置いてある場合は事故を起こさないようにしっかり対策をとりましょう。
<目次>
犬が誤飲すると命に関わるもの①「不凍液(エチレングリコール)」

不凍液(エチレングリコール)はあまり馴染みがない物のように感じますが、自動車のラジエーター液や固くならない保冷剤、凍結防止剤などに使用されている成分です。
犬が口にする機会が少ないように思えますが、メンテナンス不足で車外に漏れ出てしまったラジエーター液や置きっぱなしにした保冷剤を噛んで口にしてしまう可能性があります。
不凍液は甘い味や匂いがするため、匂いにひかれて犬が誤飲しやすい成分です。
飲み込んでしまうと、体の中で分解されていくうちに毒に変わり、腎臓にダメージを与えます。
小型犬だとわずかスプーン2杯程度で致死量になるほど危険な成分なので、犬が接触する機会を作らないように気をつけましょう。
犬が誤飲すると命に関わるもの②「殺鼠剤」

殺鼠剤はねずみを駆除するために使用される薬剤で、一般家庭だけではなく工場や倉庫、農業施設など色々な場所で使用されています。
こちらも犬が口にする機会は無いように思いますが、殺鼠剤の多くはねずみをおびき寄せるために甘い香りや味付けがされているため、犬が誤飲する可能性は高いです。
また殺鼠剤を直接口にしなくても、殺鼠剤を食べたねずみの死骸を食べて、中毒を起こす可能性もあります。
殺鼠剤も誤飲すると呼吸困難や痙攣、昏睡といった重篤な症状を引き起こし、最悪の場合死に至ります。
自宅で殺鼠剤を保管する場合やねずみが多い地域に住んでいる場合は、犬が誤飲しないように十分注意を払いましょう。
犬が誤飲すると命に関わるもの③「ナメクジ駆除剤」

ナメクジの駆除剤に使われる主成分は大きく分けて2つあります。
ひとつが「燐酸第二鉄」でこちらは動物への影響は低いと言われています。
もうひとつの「メタルアルデヒド」は誤飲すると中毒を引き起こします。
摂取すると1~3時間以内に嘔吐や血圧下降、痙攣、運動失調(ふらふらする)、高熱といった症状を引き起こします。
致死量は諸説ありますが、体重1kgあたり10mg以上を摂取すると危険だと言われており、メタルアルデヒドの配合が多いナメクジ駆除剤だと、少量口にしただけでも命の危険があります。
ナメクジ駆除剤を使用する場合は、配合されている成分をよく確認し、保管場所に十分注意しましょう。
犬が誤飲すると命に関わるもの④「除草剤」

庭や駐車場を所有している方は、効率よく雑草を減らすために除草剤を使っている方も多いかもしれません。
除草剤には「ビピリジニウム系」「有機ヒ素系」など様々な種類がありますが、中には犬に強い毒性を持つものもあり、嘔吐、下痢、痙攣、運動失調(ふらふらする)などの症状が起こります。
除草剤が付着した草を舐めたりする経口摂取だけでなく、皮膚から吸収される経皮摂取や、噴霧された薬剤を吸い込むことで中毒を起こす可能性もあります。
また草を直接舐めなくても、足裏や被毛に付着した薬剤をお手入れの際に舐めてしまうことや、土壌処理された場所で拾い食いし、薬剤ごと口に入れてしまう危険もあります。
除草剤を使用する場合は、犬の手の届かない場所に保管し、散布した場所に犬を近づけないようにしましょう。
犬が誤飲すると命に関わるもの⑤「観賞用のゆり」

ゆりの花は、私たちにとって身近な植物ですが、犬にとっては危険な植物です。
ゆりはすべての部位(花、花粉、茎、葉、根)が有毒であり、花瓶の水も中毒を引き起こす可能性があるといわれています。
わずかな摂取でも嘔吐、えずき、食欲不振、活動性低下などが見られ、急性腎障害を引き起こす場合もあります。
家の中にユリ科の植物は持ち込まない、飾らない方が誤飲の心配がなくて安心ですね。
犬が誤飲すると命に関わるもの⑥「人の医薬品」

アメリカのASPCA中毒事故管理センターの報告では、ペットの中毒事故の原因となった毒物は6年連続で「人の医薬品」でした。
薬なんて犬は食べないと思うかもしれませんが、薬の中には香りがついていたり、糖衣になっていたり、飼い主さんが誤って犬の近くに落としてしまうなど、犬が誤飲する状況はいくらでもあります。
また、薬だけでなく薬を包装している包装シートも一緒に飲み込んでしまう場合もあります。
誤飲した薬によって犬に現れる症状は異なりますが、人間の解熱鎮痛剤として広く用いられるアセトアミノフェンは、犬の死亡例が報告されている成分ですし、風邪薬や鼻炎薬に配合されているプソイドエフェドリンは心拍の増加や血圧・体温の上昇を起こし死亡リスクもゼロではありません。
人用の薬は犬と同じ空間に置きっぱなしにせず、棚や引き出しにしまって保管しましょう。
犬が誤飲すると命に関わるもの⑦「ひも」

よく誤飲される異物のひとつが「ひも」です。
ひもを誤飲すると聞くとイメージしにくいかもしれませんが、おもちゃについているリボン、ズボンのひも、ビニール紐、靴紐、ロープのおもちゃなど犬の周りには、紐状のものが溢れています。
ひもを誤飲すると、胃腸の蠕動運動(伸び縮み)にひもが触れ続けるので、胃腸の粘膜が傷つく可能性があります。
また、ひもが口や胃の出口にひっかかると、腸がアコーディオンのように折りたたまれてしまい、内容物が腹腔内に漏れ出て腹膜炎を引き起こす可能性もあります。
愛犬の周りに紐状の物がどれだけあるかを把握し、誤飲させない対策を取りましょう。
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犬が誤飲すると危険なものを7つご紹介しました。
私たちにとっては身近にあるものですが、犬が誤飲すると命に関わるものもたくさんあります。
誤飲すると危ない物をしっかり覚えて、誤飲させない対策を取りましょう。
<参考URL>
イヌの中毒事故を防ぐために 公益財団法人日本中毒情報センター
>https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/03/f002341b640766a30ce858b739c931a8.pdf
犬、猫の誤飲:傾向と対策 傾向編 アニコムホールディングス
>https://www.anicom-page.com/hakusho/journal/pdf/120206.pdf
パラコート中毒罹患犬の肺組織傷害発生におけるフリーラジカルの関与および肺組織のリモデリング
>https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010702981
<画像元>
canva
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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