痛風。それは別名【贅沢病】と揶揄されつつも「風に吹かれただけでも激痛」を伴うことから、人からは忌み嫌われる疾患として多く知られてきました。
ただ、それはあくまでも人が対象のお話。では、犬ではどうでしょうか?現在は犬の食餌もクオリティーの高いものが増え、中には手作り食で愛犬の健康を維持している飼い主さんも珍しくはないでしょう。
そこで今回は、人にある痛風が犬にも存在するのか、痛風の基本から発症有無、痛風に似た偽痛風についてもご紹介します。
<目次>
痛風ってどんな病気?別名【贅沢病】の基本知識

痛風とは、血液中に存在する尿酸(プリン体が肝臓で代謝された代謝産物)が過剰になって起こる“高尿酸血症”という症状が原因で、関節内に尿酸の結晶が沈着、激しい炎症と共に激痛を生じてしまう疾患のことを言います。
では、なぜこの痛風が、別名【贅沢病】と揶揄する様な言葉で表現されているのでしょうか?
その理由は、主に高カロリー・高プリン体が多く含まれる食材(レバー、キャビアやいくらなどの魚卵、エビ・カニなどの魚介類、ビールなど)が痛風の大きな要因であり、そうした食材を日常的に食べられる富裕層に多い病気だったためです。
一般的にプリン体は、痛風の原因となる尿酸を増やす成分です。
摂取量自体が適切であれば、体のエネルギー代謝には欠かせない物質のため問題ありませんが、それを過剰摂取してしまうと血中の尿酸が異常に増えてしまい、痛風を引き起こしてしまう可能性があるのです。
人の場合だと、ほとんどが男性に発症しやすく、ある日突然足の親指の関節が腫れて激痛に襲われるとされています。また、この症状は発作的に起こることから、しばしば『痛風発作』とも呼ばれ、一度発作が起こると、その後2~3日は激痛によってまともに歩けないほどの痛みが続きます。
これらの症状は、正しい診断や治療を行なえば徐々に痛みは和らいでいくと言われていますが、それら治療を放置してしまうと、同じような発作が繰り返し起こるようになり、発作を起こす度に病態は悪化していくと言われています。
痛みだけじゃない?!痛風の本当の恐ろしさ

しかし痛風の恐ろしさは、この痛みだけではありません。
痛風の本当の恐ろしさは、この痛みを放置してしまった先にあります。
先程も申し上げましたが、痛風は基本的に尿酸値が高い状態になると、発症しやすくなる疾患です。
尿酸値が高いままで生活を続けてしまうと、痛風に限らず、糖尿病や高脂血症、高血圧などを合併しやすく、これらの生活習慣病は動脈硬化の最大危険因子ともされています。
また体内に尿酸が増えると、関節だけではなく、腎臓にも結晶化した尿酸が溜まることがあり、大変危険です。
腎臓の中に溜まった尿酸結晶は、腎臓の機能低下を招き、場合によっては慢性腎不全を起こしてしまう可能性まであるのです。
さらに、尿酸結晶が尿路に溜まってしまった際には、皆さんもよく知る尿路結石になる可能性があり、尿酸結石が膀胱に溜まってしまった際には、膀胱結石になる可能性があります。
怖い痛風は犬にもあるの?

では、このように一口に痛風と言っても様々な合併症を起こしやすい痛風は、犬にも起こり得る疾患なのでしょうか?
ご安心ください。結論から申し上げますと、犬の場合は一般的に痛風という疾患を患うことはありません。
そもそも犬は、体内に「ウリカーゼ」という酵素を持ち合わせています。
この酵素は、肝臓で代謝されたプリン体の代謝産物の尿酸を分解し、水溶性(水に溶けやすい)のアラントインという物質に変換した上で尿と一緒に排泄するため、痛風になることがまずないのです。
そのため、基本的に犬はこのアラントインという物質に変換されるおかげで、尿酸が結晶化することはなく溜まることもないため、痛風の痛みにも苦しめられることはありません。
ただし一部の犬種に限っては、この尿酸をアラントインに変換できる「ウリカーゼ」を遺伝的に持ち合わせない犬種が存在します。
それでは、その例外となる犬種とはどの犬種なのでしょうか?次章で詳しく見ていきましょう。
「ウリカーゼ」を持たない犬種

「ウリカーゼ」は、犬にとって痛風の原因ともされる尿酸自体を分解してくれる、とても有り難い酵素ですが、この酵素を唯一持たない犬種が存在します。
その唯一持たない犬種は、ダルメシアンです。
ダルメシアンは、尿酸を分解することなく、そのまま尿酸として尿から排泄されることが遺伝子上、固定されてしまった唯一の犬種だと言われています。
このため、ダルメシアンは体内に尿酸を溜め込みやすく、注意して食餌管理に取り組まなければ、尿酸結石を患いやすい特徴を持ち合わせています。ただ、このような遺伝的要因を持ち合わせるダルメシアン以外にも、以下のような犬種を迎えている飼い主さんについては、同じく尿酸結石などに注意する必要があります。
▼【ウリカーゼはあるものの尿酸結石が出来やすい犬種】
・イングリッシュ・ブルドッグ
・ミニチュア・シュナウザー
・ヨークシャー・テリア
・チワワ
・ダックスフンド
といっても上記の犬種は、ダルメシアンと違ってウリカーゼを持っているため、ダルメシアンほど食餌管理の徹底は必要ないかもしれません。
しかしダルメシアンは、元来変異型のホモ接合体を持つのがセオリーだった犬種と言われています。
近年はダルメシアンの近縁でウリカーゼを持つイングリッシュ・ポインターとの交配のおかげで、徐々に遺伝子の改善がされつつあるようです。
ただ、念のためその食餌管理には、プリン体が多くならないような低プリン体に配慮した食餌(主食がラムや鶏、ホワイトフィッシュなど)を心掛けましょう。
痛風そっくり?偽痛風とは?犬で見られた症例について

人で知られている痛風と似た症状に、偽痛風という疾患があります。
これは、症状こそ痛風に似た激しい関節炎(発熱や腫れ)を引き起こす疾患とされていますが、実は全くの別物です。
偽痛風とは、主にピロリン酸カルシウムという名前の結晶が、関節内の軟骨や周辺組織に沈着することで起こる急性関節炎のことを言います。
突然の関節の痛みや腫れ、発熱などの症状を呈し、発症する原因には、加齢や軟骨変性、脱水などが挙げられます。また、主な好発年齢には、70歳以上という高齢者が発症しやすい傾向にあります。
一方で痛風は、発症する年齢層は大体中齢で突然の痛みも足の親指の激痛が大半。そして、その原因も高尿酸血症や生活習慣によるもののため、全くの別の病気だとされています。
ただ、この偽痛風らしい症状を人ではなく、犬が呈した症例があるのをご存知でしょうか?
一つの症例については2007(平成20)年3月に2匹の犬が、もう一つの症例については2020(令和2)年9月に12歳の犬が診断を受けた症例が存在します。
これらの症例はいずれも偽痛風と診断され、2007年では、急性の跛行と発熱を呈した2頭の犬に菱形結晶が、2020年では、12歳のスタンダード・プードルの右後肢第5指に菱形の結晶が確認されたと言います。
ただし、この2症例に関しては最も稀な診断結果とされているため、過度な心配をする必要はありません。
しかし稀とはいえ、このような症例が存在する以上、愛犬が歩行時に異変などを呈したような際には単なる関節炎だけではなく、偽痛風などの疾患もあることを覚えておくと良いでしょう。
まとめ

いかがでしたか?
基本的に犬は、人が患う痛風という症状を起こすことはありません。それは、犬には「ウリカーゼ」という分解酵素が備わっているからですが、ダルメシアンだけは注意が必要です。
痛風は、プリン体などの過剰摂取によって引き起こされる疾患ですが、それと同時にダルメシアンや尿石症を患いやすい犬種にとっては、これらの疾患リスクを高めてしまう物質でもあるため、痛風という名の疾患にならずとも、プリン体の影響に配慮した食餌管理のある生活を送らせてあげてくださいね。
<参考サイト>
Possible pseudogout in two dogs|2匹の犬に偽痛風の可能性あり
>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17355611/
Tophaceous pseudogout in a 12-year-old dog, with a review of applicable laboratory tests|12歳の犬における結節性偽痛風と、適用可能な臨床検査の検討
>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32757850/
How do purines affect dogs?|プリン体は犬にどのような影響を与えますか?
>https://verm-x.com/blogs/news/how-do-purines-affect-dogs#:~:text=Why%20do%20they%20create%20urate,like%20kidney%20stones%20or%20gout.
プリン体と痛風|アルヒ動物病院
>http://www.aruhi-sapporo.jp/?p=1386
<画像元>
photoAC
Canva
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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