ペットを迎えた飼い主さんがいずれ直面する『愛犬とのお別れの時』。
何を隠そう、筆者もこれまで初代柴犬、2代目シェルティと、2度のお別れを経験してきました。
きっとこの記事を見ている飼い主さんの中には、筆者以上に経験した方もいるかと思います。
そこで今回は、ペットロスから立ち直るためのプロセスやペットロスで役立つグリーフケアについて解説します。
そもそもペットロスってどんなもの?

そもそもペットロス(PET LOSS)とは、文字通り『ペットを失う』ことを指し、愛犬を失くした飼い主さんご自身の体験による悲しみのことを言います。
ただこれは、ペットとなる犬や猫と暮らす人ならば、正常な心の反応です。
また、ペットロスは「対象喪失」の一つとも言われています。
「対象喪失」とは、かけがえのないものを失い、深い悲しみを感じる体験の事を指し、その経験は近親者の死を初めとする、愛情や依存対象の喪失など、主に【とても親密な関係にあった人や対象】との別れが該当しています。ということは、今やペットは親しい人と同等の扱い、またはそれ以上の存在と言っても過言ではないということが窺えるため、一口にペットロスと容易に言えても、実際のところその経験は、その人のメンタルヘルスに大きな影響を及ぼす状態になる可能性が高い、ということを意味しています。
人との別れもそうですが、ペットを迎えた以上、ペットとの別れは避けては通れません。
ましてや犬の場合には、「失くした子にもう一度会えるなら、してあげたいこと」というあるアンケート調査で、犬の飼い主さんは『懐古的』に「ボール遊びが好きだったからもう一度遊んであげたい」といった回答が多かったことから、人との繋がりをとても深く築こうとする動物です。
そのため、ペットロス(PET LOSS)という言葉は、単に『ペットを失う』というものではなく、ご自身の人生に彩を与え、そして共に人生を歩んできたかけがえのない存在を失くした大きな喪失の一つと言うことがご理解頂けるかと思います。
ペットロスは立ち直らなければいけない?

時々、ペットロスで悲しんでいる人に対して「たかがペットが死んだくらいで…」とか、「いい加減立ち直りなよ」といった心無い言葉をかける人が居ますが、ペットロスになってしまった人にとって愛犬、愛猫は【たかがペット】でもなければ、すぐに【立ち直れるもの】でもありません。
むしろそういった心無い言葉は、最愛のペットを失くした飼い主さんを余計に苦しめ、それまで『愛犬を失くした飼い主さんご自身の体験による悲しみ』として正常に働いた心の反応のペットロス(PET LOSS)が【愛犬を失くした悲しみが重症化し、心身に様々な症状が現れる】ペットロス(PET LOSS)症候群という病気になってしまいかねないのです。
ペットロス症候群になってしまったことで見られる症状には、睡眠障害や消化器症状、頭痛やめまいなど様々なものがありますが、ある統計では、ペットを亡くした人の3割以上が抑うつ状態になるという、れっきとした精神疾患を患ってしまっている飼い主さんが居るそうです。
筆者も、生前様々な疾患を抱えていた2代目のシェルティについては、看取ってあげたかったのに、買い物に出掛けているほんの数十分の間に亡くなって最期を看取ることが出来ずに、「あの時出掛けなければ…」という後悔の念は今でも絶えません。
しかし、その一方で生前愛犬は筆者が悲しむことをとても気にする性格だったため、愛犬がその生涯を終える時に筆者が居ない時を選んだのは、愛犬の優しさ故だったのかもしれないと思うと、逆に無理な立ち直りほど愛犬に失礼なものはないと感じます。
ペットロスは決して立ち直らなければいけないものではありません。
あくまでも自分のペースで、無理のない方法をもって、気持ちの整理を付けましょう。
ペットロスの立ち直りプロセスって?

一般的に愛するものを失った時、人の心はいくつかのステップを踏んで立ち直っていくとされています。ペットロスからの立ち直り方もそのステップに則って、以下のような悲しみからの立ち直りプロセスが存在します。
ペットロス立ち直りプロセス①:否定
死に直面した時、多くの人が当然のように最初に抱く感情が、「こんなはずじゃない」と否定することで大きなショックから逃げようとする自己防衛本能が働く『否定』心理です。
大切な愛犬が亡くなれば、誰しもが感じるこの感情は、自然な自己防衛反応なので、この時点では無理に愛犬の死を受け入れようとする必要はありません。
ペットロス立ち直りプロセス②:交渉
次に、「なんとかして現状を変えられないか?」失ったものを取り戻したいという非現実的な感情が自分の中で働く『交渉』心理状態では、神頼みのような気持ちが働きます。
ただし、この時点においてもまだまだ気持ちの整理が付けられずにいる段階です。それこそ昨日まで元気だった子を失った場合には、より強く表れる傾向があるため、その時には存分に悲しむことが大切です。
ペットロス立ち直りプロセス③:怒り
ペットロス立ち直りプロセス3つ目は、交渉しても実現できない現状への不満や罪悪感といった感情が働く『怒り』心理です。
この感情は、例えばペットが自然な亡くなり方をしたなら、その時の愛犬の状況などでも変わってきますが、多くは筆者のようにご自身に向き、それが病気や事故ならば他人に向くという状態です。
この感情については、『怒り』が大いに関わっているため悲しみがより強く出るかもしれませんが、愛犬を大切にしてきた飼い主さんなら当然の感情なので、その悲しみは理解してくれる人に前面に表現してください。
きっとその悲しみを受け止めてくれるはずです。
ペットロス立ち直りプロセス④:受容
怒りの心理を経て、ようやく現実を変えることは出来ない、起こったことを理解できるように感情が働く『需要』心理では、徐々にペットを失くした悲しみだけではなく、楽しかった思い出などに目を向けられるようになってきます。しかし、“楽しかった思い出にも目を向けられる”ということは、良い兆候の反面愛犬を失った事実が顕著となるため、この段階が一番ツラいかもしれません。
そのため、ツラい時は気が済むまで泣いて、ご自身を労わってあげてください。
ペットロス立ち直りプロセス⑤:解決
前述した4つのプロセスを経て、自分の気持ちの整理、ペットに対する感謝の気持ちや失った事実を肯定することが出来て、徐々に悲しい気持ちをしっかり受け止められることが出来れば、ようやく『解決』という心理状態へと向かいます。
悲しみから立ち直るためのプロセスは、この『解決』という段階に至って初めて立ち直るということが実現できるのです。
失った悲しみに寄り添い癒すグリーフケア

「グリーフ(Grief)」とは、日本語で「悲嘆、悲しみ」という意味ですが、大切な人や対象などを失った後に心身に起こるあらゆる反応の事を指す言葉としても使われています。
そして、その悲しみの渦中にいる人に寄り添い、受け入れ、その人が立ち直れるよう支援することを『グリーフケア』と言います。
この『グリーフケア』という言葉は、1960(昭和35)年代に欧米で提唱され、日本でも1970(昭和45)年代から研究されていましたが、2011(平成23)年の東日本大震災で、突然愛する家族の命を失った人や住み慣れた町を離れざるを得なかった人、そして、大切な愛犬を手放さざるを得なかった人に対する心の復興支援として注目されました。
また、1998(平成10)年にWHO(世界保健機関)の常任理事会において、健康の定義を従来の「身体的(physical)」、「精神的(mental)」、「社会的(social)」に「霊的・魂(spiritual)」を加えるべきだという議論が持ち上がったことがあったようです。
残念ながら採用されることはなかったものの、この「霊的・魂(spiritual)」に対する議題が上がったことで関心は高まり、その後ペットロスなどの喪失体験の悲しみも、「魂の痛み(スピリチュアル・ペイン)」として考えられるようになって、『グリーフケア』とも密接に関わっていると言われるようになりました。
『グリーフケア』と聞くと、精神科医やカウンセラーなど専門的な知識を必要としている人の施術と感じる人も多いかもしれませんが、『グリーフケア』とは、「悲嘆・悲しみのケア」という意味です。
例えそれが身近な家族や友人、知人でも悲しみに寄り添い、【聞き役】に徹底してくれるなら、それはれっきとした『グリーフケア』なので、もし聞き役に徹してくれる人が傍にいるなら、その人に思う存分愛犬を失ったツラさを吐き出してみてくださいね。
まとめ

ペットロスは動物を迎えていれば、常に身近なものです。
しかし、だからこそ日々の動物たちとの暮らし、接し方、心構えなど、様々な視点からペットロスに対する考えを持ち合わせていたいものですね。
<参考書籍>
いぬほん
気持ちを知ればもっと好きになる! 犬の教科書

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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