愛犬と暮らしていると、何の前触れもなく突然足を“ピーン!”と伸ばすような姿を目にしたことはありませんか?
突然のことだと「大丈夫?」と心配になる反面、その姿はまるで私たちも経験するこむら返りに似ていることから、「足でもつったのかな?」と感じることもあると思います。
しかし実際のところ、犬の足が本当につることはあるのでしょうか?
今回は、そもそも犬の足はつるのか、犬の足が突っ張った時の原因や理由、対策をご紹介します。
犬が足をつることはある?

本来筋肉の働きというのは、伸び縮みして普段の生活を手助けしてくれる組織のため、正常に働いている限り「足がつる」ということは起きません。
しかし、疲れていたり、体内の水分が不足していたり、栄養不足だったり、様々な要因により、人においては筋肉の収縮が治まらず、こむら返りを起こしてしまいます。
人の場合、筋肉の痙攣で起こる「足がつる」という症状そのものは、とても痛く、しばらくの間動けなくなってしまうものですよね。
それこそ少しでも足を動かそうものなら、ピンッとした痛みが再び押し寄せて、また動けなくなってしまいます。
しかし、そんな人で起こる症状が、犬でも時々見られることがあります。
ただし、このような症状を犬が見せた時には、この姿は人で言うところのこむら返りではありません。
そして、犬が「足をつる(こむら返り)」こと自体も、一般的にはないと考えられています。
「足をつった」ような姿を犬が見せた場合には、この行動は「足がつる」こととは全く違った原因、理由が考えられます。
もし、愛犬との散歩中や遊んでいる最中、普段の生活の中で、突然足をピーンとするような姿が見られた時には、まずは落ち着いてその状態を観察し、適切な対応を心掛けることが大切です。
犬が足をつったような姿を見せる原因とは?

では、犬が突然足をつったような姿を見せる原因には、何が考えられるのでしょうか?
実は、このような姿を見せる裏側には、飼い主さんが思っている以上に深刻な病気が隠されている可能性があります。
それぞれ一つずつ詳しい内容を見ていきましょう。
1.膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、主にトイ・プードルやポメラニアン、ヨークシャー・テリア、チワワといった超小型犬や小型犬が発症しやすい疾患の一つです。
膝にある“皿”がズレてしまうことで起こる疾患で、先天性のものと後天性のものがあるのが特徴です。膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨が内側にズレる内方脱臼と、外側にズレる外方脱臼に分けられていますが、その主な症状として、脱臼した足を引き摺ったり、地面から足を上げて歩いたり、そして時に、足をピーンと伸ばしたりする姿が見られることがあります。
膝蓋骨脱臼は症状によって4つのグレードに分けられますが、グレードが1~2の軽症のものでは、痛みがほとんどなく犬自身が自分で後ろ脚を伸ばして脱臼を治してしまうことも少なくないため、初めてその姿を見た時には「足がつったのかな?」と感じるかもしれません。しかし、愛犬自身が足を伸ばしている姿に遭遇した時には、小型犬を迎えた飼い主さんは特に膝蓋骨脱臼を疑ってみましょう。
2.股関節形成不全症
股関節形成不全症は、生まれつきの股関節のゆるみが原因で、成長とともに股関節の亜脱臼などが進行、様々な症状を示してしまう疾患の一つです。
主にラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード、セント・バーナードなどの大型犬で発症が多く見られます。
一般的には、後ろ足の成長不良や股関節の可動域制限によって、足の伸展(伸ばした)時に痛みを伴いますが、この時の行動としてピンッと足がつったような姿が見られることがあります。ただし、このような痛みを伴う症状は、成長後に約8割が一度鎮静化すると言われています。
しかし股関節の関節炎は日々進行し、成犬になった時には骨棘と言われる棘が形成され、変形性関節症が生じてしまう可能性があるため、気付いた際には早急な対応を心掛けることが大切です。
3.椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、多くの場合首の付け根や腰など、日常的によく動かす部分にその症状が表れます。
しかし、椎骨と椎骨の間のクッションの役割を果たす椎間板は、どの部分に位置するかによって、その症状は異なるため、必ずしも首の付け根や腰などに症状が表れる訳ではありません。
ただ、椎間板ヘルニアの発症部位が、一般に多いと言われる胸腰椎部や頸椎部に発生した場合には、動きたがらなかったり背中を触ると痛がったりする症状に加えて、稀に足がピンッとつったような姿を見せることがあります。また、このような足がつったような姿は、椎間板ヘルニアを手術した後の回復期にも神経反射的に足を突っ張った姿を見せることがあります。
椎間板ヘルニアの好発犬種には、ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギー、ビーグルなどが該当しますが、中でも軟骨異栄養性犬種の代表として知られているミニチュア・ダックスフンドでは、椎間板ヘルニアの全犬種生涯有病率が3.5%なのに対し、20%~60%の確率で発症すると報告されているデータも存在するため、足を伸ばす仕草に遭遇した際には、出来るだけ早く動物病院を受診しましょう。
犬の足がつるような姿をさせないための対策法

それでは、ここからは犬の足がつるような姿をさせないための対策法を見ていきましょう。
愛犬が日々過ごす生活環境のちょっとした部分に工夫を加えるだけでも、だいぶ負担を軽減することが可能なので、ぜひ参考になさってくださいね。
対策法1.ペット用のスロープやステップを使う
私たちが普段寛ぐソファやベッドの中には、日本の住環境に合わせて収納も兼ね備えたものが販売されていたりします。
人の立場からすれば、収納のあるソファやベッドなら、利便性も高くとても重宝するものです。しかし、犬の立場を考えた時には、この高低差は足腰に負担をかけてしまう原因となります。
特に胴長短足の犬種の場合、せっかく飼い主さんの隣で寝たり座ったりしたくても、その高低差があまりにもあると、その負担の掛かり方は胴長短足でない犬種に比べて、結構大きいものとなってしまいます。
そのため、元から背の高いソファやベッドを置く場合には、予め愛犬用のスロープやステップを用意した上で、愛犬にはしっかりとそれを使って、上に昇れるようなしつけをしっかりとしてあげましょう。
対策法2.フローリングに絨毯やカーペットを敷く
掃除の簡便さや見た目のスタイリッシュさが魅力のフローリングですが、この場合にも足腰に負担が掛かりやすい犬種の場合、出来る限りフローリングには絨毯やカーペットを敷く工夫を施しましょう。
犬の肉球は多くの場合、衝撃吸収や断熱材、滑り止め効果などの様々な役割を担っていますが、フローリングに対しては少し違います。
普段私たちが滑ることなく生活しているフローリングでも、犬が何も敷かれていないフローリングを歩く際には、大なり小なり滑っていることがほとんどです。特に長毛犬種の場合だと、肉球の間にも被毛が生えていて、何の工夫も施していないフローリングでは滑って足腰に余計な負担が掛かってしまうため、しっかりと対策しましょう。
対策法3.階段の上り下りでは抱っこor階段マットを貼る
集合住宅ではなく一軒家で生活している場合、多くは階段のあるご家庭がほとんどだと思います。
ただ、このような場合、足腰に負担が掛かりやすい犬種の階段の上り下りは、出来るだけ避けさせることが大切です。特に胴長短足の犬種では、階段の上り下りをする際の動作は腰に大きな負担となるため、椎間板ヘルニアなどの発症に将来繋がってしまう恐れがあります。
そのため、階段があるようなご家庭では、階段マットなどを敷くと同時に足腰に負担が掛かる愛犬であった場合は、出来るだけ抱っこで負担にならないような対策を講じてあげましょう。
まとめ

犬にとって、人のように「足がつる」という症状は、基本的にはありません。
しかし犬は、足がつることがない代わりに、足をピンッと伸ばす仕草には何かしらの腰回りの病気が隠されていることがあります。
犬の体の主な重心は、一般的に前足に約60%~70%、後ろ足に約30%~40%が掛かっていると言われています。しかしこれは、腰回りの病気が発症した時や持病が悪化した時には、さらに重心が前に傾くことを示唆しています。
そのため、もしもご自身の愛犬に「足をつる」ような仕草が見られた場合には、ご家庭で出来る対策をしっかりとした上で、一日も早く動物病院を受診しましょう。
<参考書籍>
犬の医学
もっともくわしいイヌの病気百科
<参考サイト>
「犬は足がつる事ってあるの?」|犬の関節・ヘルニア新大辞典
>https://inujiten.com/kansetuhernia/

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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