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「愛犬が急に大人しくなった」「いい子すぎる」それってストレスが原因の病気かも!?

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皆さんの愛犬が苦手なことってあるでしょうか。

歯磨きやブラッシングが苦手な犬は多いですが、愛犬のためだからと無理に押さえてブラッシングをしたり叱りながら歯磨きをしていませんか?

愛犬が急に大人しくなったりじっとするようになったら「いい子になってくれた」「わかってくれた」のではなく愛犬の心が傷つきストレスが溜まっているサインかもしれません。

今回は、愛犬が逃げられないストレスを受け続けると発症する「学習性無力症」についてお話するので、ぜひ最後までご覧ください。

「いい子じゃなくて病気?」犬の”学習性無力症”ってなんですか?

「学習性無力症」という病気をご存知でしょうか。

学習性無力症は、繰り返し避けられないストレスを経験することで、「何をやっても状況は変えられない」と感じ、心が折れて無気力状態になることを指します。

人間ではうつ病の一因ともされていますが、犬にも見られることがあり強いストレスから逃れられない状況に置かれると「何をしても無駄だ」と感じ、抵抗することさえやめてしまうことがあります。

抵抗をやめると聞くと「いい子になってくれた」「受け入れて大人しくなってくれた」と感じるかもしれませんが、この状態が続くことは犬にとって非常に危険です。

犬が「嫌だ」と感じることを続けるとどうなるのか、次章で詳しく見ていきましょう。

過剰なストレスを与え続けられると犬はどうなる?

「学習性無力症」は犬を用いた実験によって発見されました。

▼1回目の実験

150匹の犬を3つのグループに分け、2つのグループに電気ショックを与えました(残りの1グループには何もしない)。1つのグループは、足でパネルを押せば電気ショックを止められる一方、もう1つのグループは何をしてもショックを止められませんでした。

繰り返しの実験により、ショックを自分で止められる犬は積極的にパネルを押すようになりましたが、止められない犬は次第に動かなくなり、ショックから逃れようとする行動すら取らなくなりました。

▼2回目の実験

犬を2つの部屋に分かれた実験装置に入れ、片方の部屋の床に電気ショックを流す実験を行いました。犬は壁を飛び越えて隣の部屋に移動すればショックを回避できます。

以前の実験で自力で電気ショックを止める経験をした犬や、実験をしていない犬は、試行錯誤しながら壁を飛び越えてショックを回避できるようになりました。

しかし、以前の実験で「何をしてもショックを止められない」と学んだ犬たちは、今回も壁を飛び越えようとせず、電気ショックをそのまま受け続けました。

▼3回目の実験

ショックを止めることができなかった犬に対して追加実験を行いました。

電気を流しても動かない犬を何十回も隣の部屋へ強制的に移動させると「自分で移動すれば電気ショックを避けられる」とようやく再学習することができました。

避けられないショックを受け続けた犬の中には、試行錯誤を続ける個体もいましたが、正常な犬と比べて学習のスピードは遅くなりました。

読んでいて胸が痛くなる実験内容でしたが、逃げられない状況で犬に過剰なストレスを与えると犬は下記のような行動を取ることがわかりました。

▼逃げられない状況で犬にストレスを与えるとどうなる?

・「自分の意志で積極的に動こうという意欲が低下する」
・「学習能力が低下する」
・「情緒的に混乱する」

つまり、犬は逃げられない状況で過剰なストレスを受け続けると、自分で行動することを止め、今まで出来ていた行動もできなくなり、無気力状態に陥ってしまうということです。

「大人しくなった」というといい子のように見えますが、いい子とは程遠く心が怯えきっている非常に危険な状態なのですね。

愛犬の日常生活でも起きる「学習性無力症」を引き起こす原因

実験内容を見て「なんてひどい」と感じた方も多いと思いますが、実は学習性無力症を引きおこすきっかけは実は犬の日常生活にも潜んでいます。

▼「学習性無力症」を引き起こす原因

・叱られてばかりで褒められることが少ない
・正しい行動をしても褒められない
・苦手なことを無理強いされる(足拭き・歯磨き・ブラッシングなど)
・苦手なことをされて吠えたり抵抗したら怒られる
・苦手な場所(病院・トリミングなど)に無理やり連れて行く
・ケージに長時間閉じ込められる
・家族内でしつけ方法がバラバラ(犬が混乱する)
・上下関係を基盤とする強引なしつけをしている

歯磨きやブラッシングを嫌がる子は多いですが「嫌だ」と抵抗すると羽交い締めにされたり、どんな行動をしても怒られるという経験が続くと、犬はやがて反応を示さなくなり動こうとすらしなくなります。

さらにその状態が続くと、日常生活全体で無気力になってしまうこともあるのです。

上記で紹介した原因はどれもつい飼い主さんがやってしまいがちなことですが、こういった日常に潜んでいる犬の「嫌だ」を無視し続けると、実験と同じように学習性無力症を引き起こしてしまう可能性があります。

「心のSOSに気づこう」愛犬を学習性無力症にしないために大切なこと

では、愛犬を学習性無力症にしないために大切なことはなんでしょうか。

ポイントを3つご紹介します。

 ①褒めて伸ばすスタイルを意識しよう

叱る前に、まず「できたこと」をしっかり褒めてあげるようにしましょう。

「おすわりできたね」「上手に待てたね」と声やごほうびで伝えることで、犬に自信と意欲が生まれます。

 ②小さなステップを大事にする

いきなり難しいことに挑戦させるのではなく、犬のペースに合わせた小さな成功を積み重ねていくことが大切です。

できたらすぐに褒めて、「楽しい!できる!」という気持ちを育てていきましょう。

 ③苦手なことは段階的に

苦手とわかっていることをいきなりやるのはハードルが高いです。

たとえば爪切りが苦手なのであれば「道具に触れるだけ」「においをかぐだけ」など段階を組んで少しずつ慣らしていきましょう。

今までの内容を見ると「犬が苦手なことは一切しちゃダメってこと?」と思うかもしれませんが、大切なのは「そもそも苦手にならないようにしっかり社会化をする」ことと「犬が苦手と感じていることは慣らす訓練が必要」ということです。

特にシャンプーや歯磨きなど犬の健康を保つうえで欠かせないことは、苦手意識を持ちやすいので、力ずくではなく時間をかけて慣らしてあげましょう。

無気力な状態は「怖い」「どうしていいか分からない」という犬の心のSOSであることが少なくありません。

学習性無力症はあまり耳馴染みのある病気ではありませんが、愛犬の心の健康を考えるうえでとても重要な病気なので、いち早く変化に気づいてあげたいですね。

<参考URL>

Learned Helplessness: Theory and Evidence
>https://ppc.sas.upenn.edu/sites/default/files/lhtheoryevidence.pdf

藤山正彦のぷち教育学【学習性無力感】
>https://freestep-walker.com/blog/cat2/post_24.html

<画像元>

canva

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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