秋に犬が気を付けておきたい木の実と言えば、ギンナンが代表的ですよね。
そんなギンナンの実に似ていて、且つ有毒成分すらも勝るとも劣らないセンダンという実があるのをご存知ですか?
今回は、秋に犬の拾い食いでギンナン同様気を付けたい『センダン中毒』について、実の特徴や中毒症状、予防法などをご紹介します。
ドッグラン大好きな子や好奇心旺盛な子、食いしん坊な子は特に要注意なので、気になる方はぜひ最後までお付き合いください。
<目次>
センダンの実ってどんな形?主な見た目や特徴

実りの季節とも称される秋には、様々な果実や植物が旬を迎えます。
特に植物に関しては、ドングリや松ぼっくり、柿やノブドウ、イチョウの木(ギンナン)など、犬の興味をそそる代表的なものが多くなります。
しかしこのような植物の中で見落とされがちな植物に、『センダン』という植物があるのをご存知でしょうか?
センダンとは、センダン科センダン属に分類される落葉高木の一種で、学名はMelia azedarach(メリア・アゼダラク)と言い、英名では、china berry(チャイナベリー)として、本州(伊豆半島以西)や四国、九州、沖縄、中国、台湾などに分布していることで知られています。
主に街路樹や庭木として植えられ、初夏になると大きな葉の間から白と紫色の小さな花を円錐状にたくさん付ける姿が見られるようになります。
▽『初夏に咲くセンダンの花』

これが秋頃に差し掛かると緑色の実を付けるようになり、次第に黄色く、最後にはクリーム色っぽい実になってきます。
▽『秋頃になるセンダンの実』

▽『冬頃に見られるセンダンの実』

センダンの実が色づき始める頃は、大体10月~12月頃。
その後、冬頃に自然と地面に落下する時期になると、ほぼクリーム色となったセンダンの実を求めてヒヨドリなどが枝に止まったり、口にしたりする姿が見られるようになります。
「良薬は口に苦し」薬としてのセンダンの効果って?

このセンダンというのは、一方では薬としての効果が期待されている植物でもあります。
2016年にはセンダンの葉から抽出した成分には、がん細胞自身のオートファジー(自食作用)を促し、最終的に細胞を死滅する効果があることが分かっています。
この研究では、センダンから毒性を取り除いた成分が、ガン細胞を移植されたマウスにどう影響するかを調査しました。
その結果、センダンの葉の抽出物を投与されたガン細胞を持つマウスは大腸がん、肺がん、胃がんにおいて、細胞の死滅が確認されました。
また、培養地のガン細胞では、70種類のガン細胞の死滅を確認し、ガンに罹ってしまった約30頭の犬に対しても、センダンの葉から抽出した成分を投与したところ、犬で9種の腫瘍が無くなったり、ガンの成長が抑制されたりしたことを報告したのでした。
こうしたセンダンの葉から抽出した成分を使用したものは他にも存在し、共立製薬株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:高居 隆章)では、『犬猫用センダンαプラス』という液体状の動物用健康補助食品を提供しています。
しかし、このようにガン細胞へのアプローチが期待できる半面、センダンの実については、ヒヨドリやムクドリといった特定の鳥類以外には有毒とされているのです。
それは一体なぜなのでしょうか?次章では、その危険性について見ていきましょう。
センダンの実の有毒性・危険性とは?

一般的にセンダンには、多量に摂取してしまうと赤血球を破壊してしまう界面活性作用のあるサポニンを多く含んでいるとされています。
また、微量なら抗がん作用としても効果が挙げられるとされるものの、基本的には嘔吐や痙攣、昏睡状態などを招くメリアトキシンという有毒成分も果実に含んでいます。
これらの有毒成分は特定の鳥類においては【無害】のようで、多量に摂取したとしても「酔った」状態にしかならないそうです。
しかし、これが人や犬、牛、豚といった哺乳動物だった場合には、多量摂取してしまうと中毒症状を起こしてしまう危険性があると言われています。
とはいえセンダンは、人であれば通常センダンの実に多く含まれるサポニンの苦みや渋みの影響で食べられたものではない代物のため、人間が誤って口にしてしまったとしても、それを咀嚼して嚥下することは不可能だともされているようです。
しかし人間の赤ちゃんや犬の場合には丸呑みしてしまう可能性があるため、十分な注意が必要です。

特に犬の場合、散歩中にちょっと目を離したり、ドッグランの景観のために植えられているセンダンの木に気付かず遊ばせたりすると、知らぬ間に拾い食いをしてしまう危険性があります。
センダンの実自体は、冬頃を目途に自然と落実(らくじつ)するようですが、その前にムクドリなどが実を突いて落としてしまうということも可能性としては否めないため、センダンの実には晩秋頃から意識し始めるよう注意しましょう。
犬がセンダンの実を誤飲してしまった時の症状は?

では、ここからは犬がもしもセンダンの実を誤飲してしまった場合、どのような症状が見られるのかを見ていきましょう。
一般的に犬がセンダンの実を誤って口にしてしまった場合、以下のような中毒症状が見られます。
▼【センダンの実を犬が誤飲した際の主な中毒症状】
・下痢や嘔吐 
  ・腹痛 
  ・よだれ 
  ・痙攣 
  ・昏睡 
  ・腎うっ血 
  ・肝うっ血 
・震え 
これら症状は、24時間以内に適切な診断、適切な処置が間に合わなければ、死亡してしまう可能性があると言われています。
また、犬が口にしてしまうと危険な致死量は、おおよそ小型犬では5個~6個程度とされています。
ただ、犬の致死量とされている「果実5個~6個」という目安は、体重換算ではどれほどの量となるのかは明確化されていないようです。
世界一体高が高いとされる大型犬のグレート・デンと、世界一最小な犬として有名な小型犬のチワワでは、当然その致死量には違いが生まれます。
そのため、小型犬を迎えている飼い主さんは特に注意しましょう。
センダンの実を愛犬が口にしないための予防法

それでは、このような中毒症状を引き起こす大変危険なセンダンの実を愛犬が口にしないための予防法には、どのような手段があるのでしょうか?
結論から申し上げれば、常に愛犬から目を離さないこと。これにつきます。
特に、食に対する執着心が強い子(フードアグレッシブなどがある子)や好奇心が旺盛な子については、気になったらすぐに口にしてしまう傾向が強いため、決して目を離してはいけません。
中でも、ドッグラン内に植えられているセンダンの木に関しては、飼い主さんたちの手から離れて愛犬たちは遊ぶため、非常に危険です。
前述でも述べましたが、犬は人と違って、基本的に口にしたものを咀嚼して飲み込むということをあまりしません。
警戒心が強い子や神経質な子であれば、一旦口にしたと思ってもペッ…と吐き出して状況を観察したりすることもあるかもしれません。しかし、食べ物らしきもの=「口にして飲み込む」という認識が強い子の場合には、勢いのまま飲み込むことはザラにあります。
筆者の2代目シェルティーそらは正に後者で、生前うっかりテーブルに置きっぱなしにしてしまった個包装のチョコレートを袋ごと口にした時は、動物病院に連れて行って催吐処置をしてもらった後も気が気ではありませんでした。
そのため、もしも愛犬がセンダンの実を誤って口にしてしまった場合には、症状の有る無しに関わらず、早急に動物病院を受診しましょう。
また、ドッグランで愛犬を遊ばせる際にセンダンの有無が気になる時には、事前にドッグランを管理している公園などに問い合わせたり、実際に訪れてセンダンの木かどうかを確認した上で遊ばせるように心掛けましょう。
まとめ

今回は、犬が秋にフォーカスされやすいギンナンと並んで注意したいセンダンについてご紹介しました。
センダンの実は、見た目も香りもギンナンとよく似ているため、愛犬も興味本位で口にしやすい傾向が強いかもしれません。しかし、ギンナンもセンダンの実も、どちらについても犬への毒性は強いため、注意しましょう。
そして、万が一愛犬が誤ってセンダンの実を口にしてしまった際は、様子や症状の有無などとは関係なく、早急に動物病院を受診するよう心掛けてあげてください。
<参考サイト>
第29回暮らしの中の薬草学|身近な薬草を知ろう
>https://www.okiyaku.or.jp/item/5463
Emerging Plant Intoxications in Domestic Animals: A European Perspective|家畜における植物中毒の台頭:ヨーロッパの視点
>https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10467095/
Chinaberry Poisoning in Dogs|犬のセンダン(チャイナベリー)中毒
>https://wagwalking.com/condition/chinaberry-tree-poisoning
<画像元>
Canva
photoAC
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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