朝晩の気温差が本格的になってくる秋は、過ごしやすい一方で、体調を崩しやすい季節でもあります。
特に呼吸器については、空気が乾燥すればするほど人も喉がイガイガするように、犬も同様に喉や鼻の粘膜を傷めやすくなるのです。
今回は、そんな乾燥しやすい秋の季節に増える犬の呼吸器疾患について、その特徴や種類、対策をご紹介します。
<目次>
東洋医学から見る秋と犬の呼吸器の関係

高温多湿だった夏から解放されて過ごしやすくなる秋の季節は、秋という季節自体が何かを始めるのに向いているため、日本では多くの【〇〇の秋】が存在しますよね。
けれど東洋医学では、このような秋の季節のことを【容平(ようへい)】と言い、そして【収斂(しゅうれん)】とも表現されます。
容平とは、収穫を意味する言葉で、万物が成熟して収穫される様を示しています。
一方で収斂とは、物事の治まりを示す意味合いから、大体秋分の時を境に乾燥などに気を付けたい時期になってくる様を示すと言われています。また、東洋医学の観点から見る秋という季節は、肺と呼吸器系の健康が乱れやすくなることから、「秋は肺を養う季節」とも言われているのです。
秋は過ごしやすい陽気が多くなる反面、乾燥する日が多くなっている証拠でもあるため、注意が必要です。
犬は、人とは違って暑さを感じなくなると水分を摂りづらく、乾燥しやすい呼吸器をさらに痛めたり、泌尿器系の疾患に繋がったりすることも少なくありません。
そのため、こうした秋こそ、適度な水分補給などの細かい気遣いを心掛けることが大切です。
犬の秋の呼吸器疾患は保険金請求でも第一位⁉

呼吸器疾患と聞くと、どうしても“乾燥”や“寒い季節”が先行して『冬』というイメージが付きやすくなりますが、実はそうでもありません。
SBIプリズム少額短期保険株式会社(東京本社:東京都港区新橋、代表取締役社長:遠藤 匡)では、2020年に独自で統計を取った保険金請求金額推移のグラフ表を作成、公表していますが、そこでも犬や猫の呼吸器疾患の割合は、意外にも『冬』のイメージを覆すような結果が示されました。
▽『犬の季節別呼吸器疾患の保険金請求金額推移グラフ』
上記のグラフを見ても分かるように、犬の呼吸器疾患の割合は、第一位が秋(9月~11月)にかけてが最も多く、次いで夏(6月~8月)という結果となりました。
逆に冬(12月~2月)は、春(3月~5月)よりも保険金請求金額が少ない結果となり、請求順では最下位という結果に。
ただ冬に関しては、そもそも空気の乾燥が厳しくなることが初めから分かっていることもあって、このような結果として大きく反映されたのかもしれません。
しかし、それでも秋のこの請求金額の多さは、犬が呼吸器疾患を起こしやすい季節だと言うことを物語っている表れでもあるでしょう。
特に秋は、空気の乾燥が朝晩に出ることが多く呼吸器に負担が掛かるため、こうしたことも踏まえ、しっかりと犬にも秋の養生を施してあげるよう意識しましょう。
犬が起こす咳の主な特徴とは?

犬が起こす咳は、人と同じように呼吸器に異常が生じた場合に表れることが多いです。
しかし、その咳の特徴によっては、ただの風邪では済まない咳の可能性が考えられるため、まずは、犬で起きる咳の主な特徴を見ていきましょう。
犬自身に伴う咳で、よく見られる代表的な特徴には、次のようなことが挙げられます。
▼【咳自体の種類】
・乾いた咳
・湿った咳
・特定条件下の咳
乾いた咳
私たち人でも経験したことがあると思いますが、犬も乾いた咳を起こすことがあります。
「コホッ、コホッ」と言ったり、「ガーガー」と言ったりしたような、乾燥した咳が特徴です。
このような乾いた咳をする場合、咽頭炎や気管支炎、気管虚脱などの病気が考えられます。
湿った咳
湿った咳の主な特徴は、痰が絡んだような音の咳です。
「ゴホゴホ」と言うような湿った咳や咳をした後に口をクチャクチャしていたりした時には、痰を飲み込んでいる可能性があります。
このような湿った咳をする場合、肺炎や鼻炎などの病気が考えられます。
特定条件下の咳
初期では運動時や興奮時などに、重症化しだすと夜中から明け方にかけても「カハッ、カハッ」といったような咳を起こすのが特徴です。
このような大きく、また、喉に何か詰まったような咳を犬が見せる場合、これらは僧帽弁閉鎖不全症からくる「心臓喘息」や「肺水腫」の可能性が考えられます。
犬が秋に起こす呼吸器疾患とは?

それでは、犬が秋に起こしやすくなる呼吸器疾患をここではご紹介します。
犬が秋に起こす呼吸器疾患には、次のような疾患が挙げられます。
気管支炎
気管支炎は主に、ウイルスや細菌に感染して気管支に炎症を起こし、酷い咳を繰り返してしまう呼吸器疾患の一つです。
乾いた咳を繰り返し、長く続くのが特徴で、ぜーぜーといった呼吸音が出ることもあります。乾燥やホコリ、気温の寒暖差などで悪化しやすく、夜間や早朝に症状がひどく出るケースもあります。
一般的に気管支炎は、人で言うところの風邪として扱われることが多い症状ですが、この症状が子犬やシニア犬の場合、肺炎などにも移行しやすいため、注意が必要です。
季節性アレルギー
基本的にこうした季節性のアレルギーで見られる疾患の多くは、ほとんどが皮膚疾患として表れることが多いですが、秋はヨモギやブタクサなどの花粉が飛ぶ季節で、アレルギー疾患を持ちやすい犬種の場合、これらが原因となって咳やくしゃみを引き起こすことがあります。
散歩の後や遊んだ後に、しきりに皮膚を痒がっていたり、赤みなどが見られたりした際には、合わせて咳やくしゃみをしていないかをしっかりチェックしておきましょう。
気管虚脱
多くは小型犬や短頭犬種に発症しやすい疾患の気管虚脱は、発症こそ初夏や真夏の暑い夜などに発症することが多いと言われています。
しかし、秋は寒暖差の影響や乾燥によって発作が起きやすい季節だとされているため、興奮した時や散歩中に「ガーガー」とアヒルが鳴くような咳が出た時には、気管虚脱を疑った方が良いかもしれません。
心臓病関連
僧帽弁閉鎖不全症などの持病がある犬やシニア犬などは、秋の寒暖差などで心臓に負担が掛かってしまいやすくなります。
特に心臓が肥大することで気管を圧迫し咳が引き起こされている場合、肺水腫に移行してしまう危険性があるため、早急に動物病院で診てもらうことが大切です。
秋の呼吸器疾患トラブルの対策方法

朝晩の寒暖差や乾燥しやすくなる秋の季節に、犬の咳を防ぐためには日頃のケアと環境作りが大切です。
以下の対策を取り入れて、呼吸器疾患トラブルを起こさないよう努めましょう。
1.室内環境の整備
秋は気温も然ることながら、湿度についてもカラッと乾燥しやすくなる日が多くなります。
そのため出来るだけ室内の環境は、室温20℃~25℃、湿度40%~60%を一定に保てるよう意識しましょう。特に乾燥が厳しい朝晩の湿度については、加湿器などを上手く活用して、極端な乾燥状態を招かないよう工夫することも大切です。
また、日々のこまめな換気や清掃も、愛犬の呼吸器トラブルを招かないための方法として、とても大切です。
2.散歩の時間帯
冷え込みやすく呼吸器などに負担を掛けやすい朝晩の散歩は避け、日中に散歩するよう心掛けましょう。
また、激しすぎる運動は肺を痛めやすい秋の季節では、かえって肺を痛めてしまう可能性があるため、適度な運動や散歩を心掛けましょう。
3.白い食材を食べたり、ツボを刺激する
秋は水分が失われやすく乾燥しやすいため、愛犬には出来る限り乾燥を招かないように、梨や大根といった白い食材などを与えると水分を補えます。
また、犬の小鼻の左右にある『迎合』と言われる小さなくぼみや、犬の首の付け根辺りにある『大椎』、犬の胸骨と前脚の境目辺りにある『中府』というツボは、呼吸器の改善に効果があり、体の免疫力アップが図れます。
コミュニケーションの一環としても役立つため、毎日少しずつ取り入れると良いでしょう。
4.体調観察
日頃どんなに愛犬の体調に気を付けていても、風邪のような症状が見られてしまうこともあるでしょう。
そんな時には、幼犬やシニア犬なら特にこまめな水分補給が出来ているか、成犬であれば変な咳をしていないか、食欲などに変化はないか、呼吸などが荒くないかを定期的に観察しましょう。
こうした体調観察は、愛犬の調子が「変だな…」と感じた時から行なうのではなく、日頃から気に掛けてあげることが対策へと繋がります。
まとめ

いかがでしたか?
犬は普段、私たち人と比べると滅多に咳という咳をする姿は見せません。
しかしそんな犬だからこそ、大切な愛犬に咳が見られた時には、「ただの風邪」で終わらせることのないように意識してあげることが大切です。
特に秋に起こす呼吸器疾患に関しては、過ごしやすさから他の季節以上に対策を油断してしまいやすいため、対策はしっかりと忘れずに。
愛犬と健やかな秋をお過ごしください。
<参考書籍>
犬のエイジングケア|食事からマッサージまで、健康で長生きするためのトータルケア
もっともくわしいイヌの病気百科
<画像元>
photoAC
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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