食べ物が原因で起こるアレルギーを食物アレルギーと言います。
犬がフードやおやつを食べた後に、下痢をしたり皮膚炎が出ると「もしかして食物アレルギーかも?!」と心配になりますね。
人は血液検査で食物アレルギーがわかりますが、犬の場合もアレルギー検査をした方がいいのでしょうか?
「うちの子、食物アレルギーがあるかも?」と思ったら、知ってほしいことをまとめました。

犬の食物アレルギ検査はするべき?

人は「食物アレルギーかも」と思ったら、病院に行ってアレルギー検査をしますね。
では、犬の場合も同じように、アレルギー検査をした方がいいのでしょうか?
●アレルギー検査の正確性は58~87%程
●アレルギーが無い犬でも「陽性反応」が出る可能性が高い
残念なことに、犬のアレルギー検査の信憑性はあまり高くなく、その正確性は58~87%程ではないかと主張する論文も出でいます。
またアレルギーでは無いのに、アレルギーを持っていると出てしまう「偽陽性」の可能性が高いと示唆する報告もあります。
このことから、積極的にアレルギー検査は勧めないという考えの獣医師さんもいます。
つまり、「食物アレルギーかも?」と思って検査をしても、それだけで判断するのは非常に難しいし、正確な結果が出ない可能性もあるということですね。
では、「食物アレルギーかも」と思ったら、どうすればいいのでしょうか?
「愛犬が食物アレルギーかも?」と思ったら、飼い主さんができること

食物アレルギーの検査は信憑性が低く、アレルギーが無くても陽性反応がでる可能性があると言うことがわかりました。
それでは食物アレルギーを疑ったら、飼い主さんができる事はなんでしょうか?
飼い主さんができること3つ
①自己判断はしない
➁食事を変える・食事を記録する
➂皮膚科専門医に診せる
ひとつずつ、見ていきましょう!
①自己判断はしない!
アレルギー検査をしていろいろな食べ物に反応が出てしまうと、「うちの子、食べられる物が何も無い」と不安になってしまいますね。
実際に鶏肉や牛肉や小麦など、さまざまな物に反応が出てしまい、フード選びに非常に苦労している飼い主さんのご相談も受けたことがあります。
しかし、陽性反応が出たとしても症状に出る子と出ない子がいますし、逆に反応が無かった食材で症状が出る場合もあります。
そのため、アレルギーかどうかは検査だけでなく「食材の絞り込み」や「生活環境の聞き取り」や「皮膚の症状」など多方面から情報を集めて判断します。
飼い主さんが自分で判断して食材を避けてしまうと、食事の幅を狭めて栄養不足になりかねないので注意しましょう!
➁食事を変える・食事を記録する!
食物アレルギーが疑われる場合、大事なポイントが2つあります!
●食事内容を変える
●食事内容を記録する
食物アレルギーを改善するには、どの食べ物が悪さをしているか特定する必要があります。
そのため食事内容をガラッと変えて、「食材を特定しやすくする」「何を食べたか記録する」ことが重要になります。
実際に、食事内容を変えて症状が改善したわんちゃんのケースを見てみましょう。
上記のわんちゃんはアレルギー検査が「陰性」で、食物アレルギー用のフードを食べてもお薬を飲んでも、かゆみや皮膚炎が治らずに犬の皮膚科を訪れました。
アレルギー検査は陰性でしたが、食物アレルギー用のフードを違う種類の食物アレルギー用のフードに変えたところ改善が見られたそうです(元のフードに戻すとかゆみが再発)。
食事内容をガラっと変えるだけで改善が見られることもあるので、日頃から食べた物は記録しておくようにしましょう。
➂皮膚科専門医に診せる!
食物アレルギーかもと思うと、食べ物だけに目がいきがちです。
しかしアレルギーの発症には食べ物以外にも、さまざまな要素が絡んでいます。

図を見るとわかりますが、食べ物以外にも「体質」や「生活環境(花粉やほこりなど)」もアレルギーを発症させる要因になります。
実際に食物にアレルギーを持っている犬は、アトピー性皮膚炎も発症することが多く、食べ物以外のアレルゲンにも反応しがちです。
そのため、犬の皮膚科では「薬に反応しているのか」「食事に反応しているのか」「感染症の可能性はないか」など、さまざまな方面から調べて治療にあたります。
「食物アレルギーかも」と思ったら、早めに皮膚科専門の獣医師さんに相談することをオススメします。
食物アレルギーの犬は、一生アレルギー用のフードを食べるの?

いろいろ調べた結果、食べ物にアレルギーがある事がわかったら、アレルギー用のフードに切り替えますね。
では食物アレルギーがある犬は、ずっとアレルギー用のフードを食べ続けなくてはならないのでしょうか?
「愛犬が食物アレルギーかも?と思ったら、飼い主さんができること」で、食物を記録することが大事とお話ししました。
どの食物に反応するかが特定できれば、一生アレルギー用のフードを食べる必要なく、別の食物やフードを選ぶことができます。
逆に言えば、食物アレルギー用のフードは、どの食物に反応しているのかを探るために活用するフードともいえます。
ただ、どのアレルギー用のフードが良いのかやアレルギーが出ている食物の特定は、獣医師さんと相談しながら進めることが大事なので、早めに獣医師さんに診せましょう。

少し難しい内容だったので、最後に大事なことをおさらいしておきましょう!
●犬の食物アレルギー検査の信憑性は低く、「偽陽性」が出る可能性もある
●「食物アレルギーかも?」と思ったら
①自己判断をしない
②食物を記録する・変える
③早めに皮膚科専門医に診せる
●原因の食物が特定できれば、アレルギー用フードを一生食べなくてもいい
食物アレルギーを疑って検査すると、かえって飼い主さんが「何も食べさせる物がない」と悩む結果になることがあります。
検査で必ず原因が突き止められるわけではありませんし、別のアプローチ方法もあるので「食物アレルギーかも?」と悩んだら、早めに皮膚科専門の獣医師さんに相談しましょう!
<参考文献>
アジア動物スキンケア検定 公式テキスト 動物スキンケア実践ガイド 岩﨑 利郎 (著)
Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (4): can we diagnose adverse food reactions in dogs and cats with in vivo or in vitro tests?
>https://bmcvetres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12917-017-1142-0
Assessment of the clinical accuracy of serum and saliva assays for identification of adverse food reaction in dogs without clinical signs of disease
>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31517577/
犬のアレルギーって?原因・症状・診断まとめ【獣医皮膚科専門医が解説】
>https://magazine.vdt.co.jp/2786/
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎が併発した犬の1例
>https://magazine.vdt.co.jp/2012/
<画像元>
Unsplash
写真AC

・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。

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