愛犬の口元のぞいてみて「なんだか歯並びが悪いかも」と感じたことはありませんか?
人の場合、歯並びが悪いと「かみ合わせが悪くなる」「虫歯や歯周病にかかりやすくなる」といわれていますが、犬の場合はどうなのでしょうか。
今回は「歯並びが悪いとかかりやすい犬の病気」や「治療が必要な目安」をご紹介します。
「歯並びをきれいにするために飼い主さんができるケア」などもあわせてご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
犬の歯並びやかみ合わせが悪いってどういう状態をいうの?
犬の正常な歯並びやかみ合わせを知らないと異常に気がつくのは難しいですね。
では「犬の歯並びが悪い」「かみ合わせが悪い」とはどういう状態をいうのでしょうか。
犬の正常な歯並び・噛み合わせは?
▼正常な犬の歯並び・噛み合わせ
犬が口を閉じたときに上の歯が下の歯をうっすら覆う状態、上の歯と下の歯がお互いの隙間に入り込む状態(画像の赤い矢印の位置)が正しい歯並びやかみ合わせです。
犬の歯並び・かみ合わせに異常がある
▼叢生(そうせい)
歯が重なり合って生えている状態で、本来歯が生える位置からずれたり生える歯の向きが変わったりしています。
▼クロスバイト
上あごと下のあごの長さは正常だが、生えている歯の位置に異常がある状態です。
画像では赤い矢印の歯が上の歯の後ろに位置するのが正常ですが、2本だけ前に出てかみ合わせが悪くなっています。
▼オーバーバイト
骨格的に下あごに対して上あごが長すぎる状態です。
一見すると気がつきにくい異常ですが、上の歯と下の歯のかみ合わせが深くなるので口の中を怪我して気がつくこともあります。
▼アンダーバイト
骨格的に上あごに対して下あごが長すぎる状態です。
ボストンテリアやフレンチブルドッグなどの一部の犬種では正常とされています。
愛犬の歯並びが悪い、その原因は?
ではどうして犬の歯がガタガタになったり、歯並びが悪くなるということが起きるのでしょうか。
愛犬の歯並びが悪くなる原因を一覧にまとめてみました。
▼犬の歯並びが悪い原因は?
・乳歯が残ったままになっている
・遺伝
・犬種の特質
・あごの骨の形成異常
・外傷による顎関節の骨折
・乳歯が残ったままになっている
犬も人と同じように子犬のときに乳歯が抜けて永久歯へと生え変わります。
通常であれば永久歯が生えることで乳歯は自然と抜け落ちるのですが、生え変わりの時期を過ぎても乳歯が抜け落ちず、永久歯と併存してしまうことがあります。
これが「乳歯遺残(にゅうしいざん)」という状態です。
乳歯が残っていることで永久歯が生えるスペースが狭くなり、歯並びが悪くなってしまいます。
・遺伝
親犬自身が歯並びやかみ合わせが悪い、またはかみ合わせが悪いDNAを受け継いでいる場合、子犬にも歯の異常が起きる可能性が高いです。
・犬種の特質
多少差はありますが、犬種によってあごの長さは決まっています。
小型犬や短頭種、あごが細い犬種は歯が狭い場所に密集して生える傾向にあるため、歯並びが悪くなりやすいです。
・あごの骨の形成異常
あごの骨がねじれている、左右であごの骨の長さが違うなど、あごの骨格異常が原因で歯並びが悪くなってしまうことがあります。
・外傷による顎関節の骨折
階段から転落する、転んで顔を強く打つなど犬の口周りに強い力が加わった事によって骨折や歯の位置がずれ、歯並びやかみ合わせに異常が起きることがあります。
特に成長期の犬が怪我をした場合、正常な歯の発育が妨げられる可能性があります。
犬の歯並びが悪いとかかりやすい病気
では、歯並びやかみ合わせが悪いとどんなデメリットがあるのでしょうか。
歯並びが悪いとかかりやすい病気を一覧にまとめてみました。
▼歯並びが悪いとかかりやすい病気
・歯周病
・乳歯遺残
・埋伏歯
・過剰歯
・歯周病
歯並びが悪いと歯に汚れがたまりやすいため、歯垢や歯石がつきやすく歯周病にかかる可能性が高くなります。
歯周病は進行するとあごの骨を溶かし、心臓病や腎臓病といった全身疾患を引き起こす引き金になるので、歯並びやかみ合わせが悪い犬は特に注意が必要です。
・乳歯遺残
先ほど乳歯遺残は乳歯が抜け落ちず、永久歯と併存している状態とお話しましたね。
乳歯が残っていると歯に汚れが溜まりやすく、歯周病や歯肉炎を招きやすいです。
乳歯遺残はトイプードルやポメラニアンといった小型犬に発症しやすいと言われているので、小型犬は歯の生え変わり時期に乳歯が残っていないかチェックするようにしましょう。
・埋伏歯
歯並びに異常がある場合、歯が生えるスペースが十分確保できないため、歯が生えず歯肉の下に埋まったままになっていることがあります。
初期では自覚症状も無いため、気づくのが難しい病気です。
埋伏歯を放置していると、埋まっている歯を中心に炎症がおき、歯茎がはれる病気を引き起こす可能性があるので、愛犬の歯の本数をチェックするか獣医師さんに口腔内をチェックしてもらうようにしましょう。
・過剰歯
通常よりも多く歯が生えてしまう病気です。
発症数自体は多くありませんが、多く歯が生えることにより歯垢が溜まりやすく歯周病になりやすかったり、口の中を傷つけやすいといったデメリットがあります。
「愛犬の歯並びが悪い・ガタガタしている」治療をした方がいいの?
では愛犬の歯並びが悪かったりガタガタしていたら、すぐに治療をした方がいいのでしょうか。
歯並びやかみ合わせに異常があっても日常生活に問題がなければ経過観察になる場合もあります。
ただ下記のような症状が出ていると、治療を勧められることがあります。
▼治療をした方がいい目安
・よだれに血が混じっている
・痛みを感じている
・食欲が低下している
・食べこぼしが多い
・口を何度もくちゃくちゃと動かす
「生えている歯が口の中を傷つけている」「痛みを感じやすい」「かみ合わせが悪くて食事を取るのが困難になっている」といった症状が現れたら治療を検討した方がよいでしょう。
また、乳歯遺残や埋伏歯では他の歯に影響を与える可能性が高いので、抜歯を進められることが多いです。
治療の相談はかかりつけ医でも大丈夫ですが、歯科専門の動物病院には歯科用のレントゲン(通常のレントゲンより細かくうつる)などの専門機器も揃っているので、歯の専門医に相談するのもよいでしょう。
「愛犬の歯並びをきれいにするために」飼い主さんができるケア
では愛犬の歯並びをきれいに保つために、飼い主さんができるケアにはどんなことがあるでしょうか。
一覧にまとめてみました。
▼「愛犬の歯並びをきれいにするために」飼い主さんができるケア
・定期的に動物病院につれていく
・定期的に口の中をチェックする
・定期的な歯磨き
・デンタルケアグッズを使用する
噛み合わせや歯並びなど、ちょっとした異常だと飼い主さんが気付かない場合があります。
定期的に獣医師さんの診察を受けて、歯並びや歯茎の状態をチェックしてもらいましょう。
早く異常を見つけることで早期治療ができ、愛犬の負担を少なくすることができます。
また、適度な硬さのガムやオモチャを使用すると、口の周りの筋肉を鍛えて歯並びにもよい影響を与えます。
定期的な歯磨きはもちろん大切ですが、デンタルケアのサプリや菌を増えにくくするデンタルスプレーなどを併用して口内環境をよい状態に保つことも大切です。
歯の状態は犬の生活や健康に大きな影響を与えます。
そのため、愛犬の歯や歯並びのこまめなチェックはかかせません。
歯並びの異常やかかりやすい病気を把握することで、早めに異変に気づくことができるので、今回ご紹介した内容を愛犬の健康管理にぜひお役立てください。
<参考URL>
【犬にも歯列矯正が必要】犬の不正咬合について
>https://circus-ah.com/wp/archives/1390
<参考書籍>
イラストでみる犬の病気 (KS農学専門書)
<画像元>
Unsplash
Canva
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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