春が過ぎ、徐々にジメジメしてくる梅雨~夏場に活躍するものと言えば、食中毒対策や暑さ対策で重宝する保冷剤ですよね。
飼い主さんの中には愛犬の暑さ対策に、即席のクールネックを作ってあげる人も多いのではないでしょうか?ただ、このような形で保冷剤を使用する場合には、保冷材の扱い方、そして愛犬の誤飲に十分な注意が必要です。
今回は、愛犬が誤飲してしまった際の主な症状や危険性のある保冷材の見分け方、対処法までを解説します。
<目次>
食べられない保冷剤を犬が食べたらどうなるの?

昔から食べられないのが当たり前な保冷剤。
そんな保冷剤を誤って犬が食べたとあっては一大事ですが、仮に誤って誤飲してしまった場合、症状としてはどんな症状があるのでしょうか?
保冷材の種類や危険性を知る前に、保冷材の誤飲によって起こり得る犬への基本的な症状を、3つのステージに分けてまずは見ていきましょう。
保冷剤誤飲による症状<ステージ1>
保冷材の中身を誤って愛犬が摂取してしまうと、その摂取後30分~12時間前後に、嘔吐、ふらつきなどの運動失調、呼吸促迫、低体温、虚弱、多飲多尿などの消化器症状、神経症状などが現れます。
保冷剤誤飲による症状<ステージ2>
保冷材の中身を愛犬が誤って摂取してから12時間後~24時間が経過した時には、頻呼吸、不整脈、肺水腫などの呼吸器系等に異常が生じます。
保冷剤誤飲による症状<ステージ3>
そして、保冷材の中身を愛犬が誤って摂取してから24時間~72時間以降では、乏尿や無尿が見られる急性腎不全を起こし、最悪は死亡してしまいます。

犬の場合、保冷材の中身を体重1kgあたり約4.4ml~6.6ml程摂取してしまうと、致死量だとされています。
保冷材の大きさにもよりますが、ごく一般的な正方形で小さいものでも、大体一つ当たり20ml~30mlのものが主流のため、超小型犬を迎えている飼い主さんは要注意です。
ただし摂取量が少なくても、口にしてはいけない保冷剤を愛犬が誤って摂取してしまったその時には、重篤化してしまう危険があるため、すぐさま動物病院を受診しましょう。
愛犬が誤飲すると危険な保冷材の原料とは?

基本的に保冷剤というと食べてはいけない代表格なので、現在も必ずと言って良いほどパッケージには『食べられません』という文言が書かれています。
しかし、なぜそこまで『食べてはいけない』と注意喚起されているのかと言えば、その成分が問題だったからです。
昔の保冷材の多くには、エチレングリコールというものが使われていました。
エチレングリコールとは、別名「エタン-1,2-ジオール」、「1,2-エタンジオール」とも呼ばれるアルコール類の一種で、粘性があり、無色透明の物質です。また、このエチレングリコールには、甘い匂いと甘味が感じられると言われているため、この成分が保冷材に使用されていると、甘い匂いと甘味を好む犬は誤食をしてしまう危険性があると言われています。
海外ではこのエチレングリコールを使用した保冷剤によって、猫がエチレングリコール中毒を起こし、上記でご紹介した症状が報告されているようですが、日本の場合ではどうでしょう?
次章では、私たちが主に受け取る保冷剤が危険かどうか、そしてその見分け方をご紹介します。
保冷剤は固まる?固まらない?危険性の見分け方

結論から申し上げれば、現在日本では、多くの保冷剤で危険なエチレングリコールを使用した保冷剤は、ほぼ使用されていないとされています。
そのため、私たちが普段買い物で渡されている保冷剤の多くも、エチレングリコールは含まれていないと言われているため、危険性はほぼないと言って良いでしょう。
しかし、例えばこれがご自身で購入するような保冷剤だった場合、もしくは保冷剤ではないけれど、熱などを出した際に良く使用されるアイスノン(アイス枕)だった場合には、話が変わってきます。
実際に日本では、アイスノンの中身を誤って摂取してしまった子が神経症状で立つことも出来ない状態となってしまった事例があるようです。
以下では保冷剤及び熱さましとして良く使用されるアイスノンも対象に、危険性の見分け方についてご紹介します。
ご自宅に、もしも該当しそうな保冷剤やアイスノンなどがある場合には、愛犬が誤って摂取しないよう、自治体のルールに則った処分方法で処分するか、買い替える検討をするよう心掛けましょう。
保冷剤が固まる場合
ご自宅で保管してある保冷剤が固まるような場合、この場合にはエチレングリコールは使用されていないため、危険性はありません。
このタイプの保冷剤は、主に成分のほとんどが水、吸水性ポリマー、防腐剤などで作られており、中毒症状が起こる可能性は極めて低いと言って良いでしょう。
しかし、大量に食べてしまったり、フィルムや袋ごと愛犬が口にしてしまったりした場合は、下痢や嘔吐、腸閉塞など、エチレングリコール中毒とは別の症状で危険性が生じてしまいます。
そのため、このような場合には動物病院でしっかりと処置してもらい、以後は愛犬の手の届かないような所で保管するよう心掛けてあげましょう。
保冷剤が固まらない場合
ご自宅で保管してある保冷剤が固まらない場合、この場合にはもしかしたらエチレングリコールが使用されている可能性があるため、注意しましょう。
また、アイスノンでも例えば『多価アルコール』といった成分や『プロピレングリコール』といった成分が記載されていたような場合には、それらは犬や猫にとって有毒な成分となるため、好奇心旺盛なワンコや気になったものはすぐ口にしてしまうワンコを迎えた飼い主さんの場合には、買い替えの検討をすると良いでしょう。
▽『多価アルコールが使用されているアイスノン』
ただし、固まらないタイプのものであっても、新生児から使用できるものやペットも使用できるようなものでは、含まれている成分が水と増粘剤を合わせたものという場合があるため、そういった場合には人体や愛犬に、害が及ぶようなことはほとんどありません。買い替える必要はないでしょう。
とはいえ、そのような問題のない成分が使用されている商品であっても、固まるタイプの保冷剤同様、多量に中身を摂取したりすれば、下痢や嘔吐、腸閉塞などの原因となるため、その点には注意しましょう。
愛犬が保冷剤を食べちゃった!どうすれば良い?

もしも愛犬が誤って保冷剤を口にしてしまった場合、まずはその保冷剤の成分表などを確認しましょう。
保冷剤の種類によって多少の違いはありますが、袋に直接原材料が記載されている保冷剤なら、その保冷剤にエチレングリコールが含まれていないかを確認し、含まれていないなら、中毒の可能性はさほど心配する必要はありません。
その代わり、袋ごと摂取しているとその他の消化器症状の可能性は考えられるため、症状の有無に関わらず、動物病院を受診しましょう。
しかし、もしも成分表を見てエチレングリコールの表記があったり、多価アルコールという表記があったりした場合には、すぐに動物病院に連絡をして処置をしてもらってください。
また、仮に袋に原材料表記がされておらず、どんな成分が含まれているか分からない場合には、動物病院への連絡に加え、製造元へも詳しい成分について問い合わせることが大切です。
多くの場合、保冷剤には『食べられません』という文言と一緒に袋には、その保冷剤の製造元及び問い合わせ先の電話番号が記載されています。
愛犬の状況を説明した上で、保冷剤に含まれている成分の詳しい内容をしっかりとメモしておきましょう。そしてその結果、問題があっても問題がなくても、動物病院には愛犬の経緯を事細かに説明し、適切な処置を施してもらいましょう。
まとめ

いかがでしたか?
保冷剤は、梅雨時期から夏場にかけて色々なものに重宝するアイテムですが、保冷材に使用されている成分については、注意が必要です。
特にアイスノンやアイスマットに関しては、今なおエチレングリコールが使用されている可能性があります。
そのため、今年の猛暑に備えて「愛犬のベッドに冷却マットを」と検討している飼い主さんについては、万が一の愛犬の誤飲に備えて、再度ご自宅の冷却アイテムの確認を今一度なさってみてくださいね。
<参考サイト>
博多犬猫医療センター|保冷剤の誤食にご注意を!
>https://www.hakata-dcm.jp/news/
動物医療センターALOHAグループ|エチレングリコール中毒
>https://www.dr-wanwan.com/aloha/blog/entry-496.html

また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。

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