かつては人里離れた場所が生活の基盤で、地方であっても滅多にあるものじゃないと思われていたクマとの遭遇。
当然犬との散歩中も、その認識が変わらない人は多かったことでしょう。
しかし近年のクマは、春はおろか冬であっても冬眠せずに人の生活圏に姿を見せるようになりました。
そこでこの記事では、万が一の備えも兼ねて、知っておきたいクマの基本的な生態から愛犬を守るための対策と飼い主さんが出来ることを解説します。
<目次>
年々増えるクマの人身被害の推移とは?

昔のクマの常識は、『冬に冬眠し春になって冬眠から目覚め、その後は山で木の実などを食べながら生活する』、というのが常識だったと思います。
ましてやクマが人里に下りてくることなんて滅多になくて、あったとしても人の姿を見た途端、警戒して逃げていくか、そもそも遭遇すること自体稀だった時代もありました。
しかし近年ではどうでしょう?
クマ避けの鈴を持ち合わせていても、センサーライトで照らされても、驚くことなく住宅街を闊歩する姿が見られるようになりました。
環境省が発表しているクマによる人身被害の推移においても、2011(平成23)年度の一年の人身被害者件数は、沖縄及び鹿児島を除いた地域全体で被害者数79件、そして死亡者数は2件という状況だったのが、2025(令和7)年度の一年の人身被害者件数は地域全体で103件、死亡者数は12件(※人身被害者数:2025/9月末時点、死者数:2025/10/29日時点)となり、14年前よりも被害者数は約1.3倍、死者数に至っては約6倍もの増加となっています。
また、クマの出没件数の推移についても、2011年度は6,154件だったものが、2025年度には16,213件(※2025/8月末時点)となり、こちらも14年前よりも約2.63倍以上に増加していることが分かりました。
ただし、ここで一点注意していただきたいのが、集計時点での数です。
上記のグラフ表は、どちらも環境省が昨年の10月末時点までに取った統計のものですが、2026(令和8)年4月7日に速報公表された被害者数は、この時点で103件⇒238件と135件急増し、死亡者数も2025年9月末の12件⇒13件と新たに1件増加しました。そしてクマの出没件数についても、昨年の8月末時点から今年の4月7日に速報で公表された件数は、16,213件⇒50,359件と34,146件増えて、約3.12倍も急増していることが公表されました。
犬へのクマ被害の推移は?

それでは、犬へのクマ被害の推移についてはどうでしょうか?
結論から先に申し上げれば、2018年~2019年にかけて北海道内で計8匹の飼い犬が被害に遭い、2025(令和7)年には宮城県や岩手県や秋田県などの東北地域で、少なくとも10匹以上の犬が犠牲になっていることが分かっています。
2025/10/25に発生した犬のクマ被害では、宮城県大崎市の庭で飼養されていた柴犬1匹がクマに襲われ、そのまま森に連れ去られ同月30日に、秋田県の住宅の敷地にて死亡しているのが発見されました。
クマの出没時期の多くは大体夏から秋にかけて最も多くなるようですが、昨年に出没数が多い場合、その翌年には春の段階から出没件数が増加する傾向があるようです。
加えて犬は、多くの場合クマに気付くと警戒心から吠えて威嚇をしますが、その分クマの闘争心を刺激して引き付けてしまう作用を持っています。
また屋外飼養の場合だと、その傍には愛犬のドッグフードが常備してあったり、置き餌のままにしてあったりもするため、匂いに敏感なクマを誘引しやすくしてしまいます。
確かに昔の犬の立場は、家族を守る【番犬】として迎えられることが多い動物でした。
それこそ、マタギ犬(クマ猟犬)とされる秋田犬や四国犬・北海道犬は、体もそこそこ大きくクマや鹿の狩猟犬として活躍した歴史を持つため、尚更今でも屋外での飼養をしている飼い主さんは多いかもしれません。
しかし、屋外飼養の犬はリードによって繋がれた状態が多く、逃げ場を失い犠牲になってしまいやすいです。
そのため、犬へのクマ被害が2018年頃から目立ち始めた近年においては、今までの常識の元で愛犬を屋外で飼養する方法は、その地域や環境状態、状況などをしっかりと見極めてあげることが大切です。
日本によく出没するクマの基本的な生態

それでは、日本に良く出没するクマの生態をここでは見ていきましょう。
一般的に日本に生息するクマの種類には、次の2種類が主流となっています。
ツキノワグマ

ツキノワグマの大きさや感覚器官、活動範囲や食性は一般的には以下の傾向が強いと言われています。
体長:110cm~150cm
体重:80kg~120kg
感覚器官:聴覚・嗅覚共に非常に優れている(嗅覚は犬の7~10倍以上)
食性:雑食性(主にブナなどの新芽や新葉、キイチゴなどの果物、笹や竹、アリや蜂といった昆虫など)
※肉食の割合に関しては、多くても10%で魚やイノシシ、動物の死体なども食べることあり
活動範囲:オス/30平方km~50平方km(稀に100平方km)
メスでは10平方km~30平方km(稀に50平方km)
ツキノワグマは、通常なら12月~4月頃は冬眠・越冬し、雪解け後に活動し始めます。
そして、夏ごろに繁殖時期を迎え、冬眠の2月頃に1頭あるいは2頭の子を出産し、子は生後1年半程までは母クマと行動を共にします。
ツキノワグマは、木登りや穴掘りなどが得意で、そのために発達した爪や力は、非常に強靭です。
さらに、走る速度も人よりも早いとされ、泳ぎも得意な傾向にあり、明け方や夕方が最も活発に活動すると言われています。(日中も活動する場合あり)
ヒグマ

一方ヒグマの大きさや感覚器官、活動範囲や食性は一般的に以下のような傾向が強いと言われています。
体長:200cm~230cm
体重:150kg~250kg(稀に300kg以上)
感覚器官:ツキノワグマ同様、聴覚・嗅覚共に非常に優れている
食性:雑食性(ただし動植物150種類以上、北海道はエゾシカ採食多い)
活動範囲:オス/50平方km~100平方km(知床400平方km)
メスでは知床半島付近では約15平方kmとの記録
ヒグマも、ツキノワグマ同様冬季には冬眠・越冬します。
また、行動や特徴もほぼツキノワグマと同様です。ただ、ヒグマはツキノワグマよりも大型であり、動植物へは150種類以上の嗜好性を持ち合わせているため、採食活動はツキノワグマ以上にパワフルで、エゾシカやサケなどの捕食といった肉食性は、ツキノワグマ以上に注意が必要です。
愛犬をクマから守るための対策

では、愛犬をクマから守るためにはどうすれば良いのでしょうか?
最も効果的な方法は、愛犬の居住空間を屋外飼養から屋内飼養に切り替えることです。
基本的にクマの活動時間が最も活発になる時間の多くは、夜間から早朝にかけてだと言われています。
夜間から早朝という時間は、多くの人が寝静まっている時間帯で、当然ながら屋外飼養されている愛犬も犬小屋などで休息を取っている時間帯でしょう。しかし、その時間帯にクマが餌を求めて住宅街を歩き回り、屋外にリードで繋がれた愛犬を見つけたとしたら、どうでしょうか?
そうなってしまったら、リードで庭の一角や犬小屋の傍に繋がれた犬は、クマから逃れることが出来ません。
また、屋外に愛犬のドッグフードを置きっぱなしにしておくことも危険です。
食べ残しの状態はもちろんのこと、空であっても匂いなどが残っていれば近寄ってくる可能性があります。
そして、散歩の時間帯とルートについても、見直すことが大切です。
時間帯は早朝や夕方といった薄暗い時間帯は特にクマが活発になり、ルートも草が生い茂った茂みや川沿いなどは、クマが出没する可能性が高いため、出来る限り人通りの多いところを選びましょう。
クマに襲われないために飼い主さんが愛犬に出来ること

愛犬に対するクマ被害を減らすことは、ひいては飼い主さん自身の身を守ることにも繋がります。
クマに愛犬が襲われないためには、上記の対策を心掛けることが一番です。ただ、そうは言ってもすぐに環境を変更することやそれまでのルーティンを変更するのが難しいという飼い主さんも少なくないかもしれません。
もし、そのような場合には、少なくとも朝晩にかけての愛犬の居場所は、必ず玄関先や簡単には開けられない頑丈なシャッター付きの車庫、または倉庫などに入れて過ごさせてあげることが大切です。
散歩の際も、時間帯やルートを変更するだけではなく、念のためのクマ用ホーンやラジオ、クマ撃退スプレーなどを持ち合わせることで、クマとの遭遇に備えましょう。
また、万が一クマを見掛けてしまっても、慌てて背を向けて走ったりはしないよう注意しましょう。
クマを愛犬よりも早く見つけた時には、愛犬が抱き抱えられるサイズなら、落ち着いて抱き抱えて、クマの様子を窺がいつつそのまま後退しましょう。
逆に抱き抱えられないほどの大型犬なら、愛犬がクマに近寄らないよう距離を取りつつ、クマ避けグッズなどを駆使してその場を出来るだけ早急に離れ、愛犬の安全を確保してあげましょう。
クマの脅威から愛犬を守ってあげられるのは、飼い主さんだけです。
人里を怖がらずに頻繁に姿を見せるようになったクマの存在は、私たち人からしても大変恐ろしいものですが、愛犬にとってもそれは変わらないため、出来ることから少しずつ、クマへの対策を心掛けてあげてください。
<参考サイト>
愛犬をクマから守るために|美の国あきたネット
>https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/92918
クマ類出没対応マニュアル|南会津町
>https://www.town.minamiaizu.lg.jp/material/files/group/7/20130426133727.pdf
クマ被害対策等について|環境省
>https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kumahigai_taisaku/dai1/shiryo1.pdf
クマに関する各種情報・取組|環境省
>https://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort12/effort12.html
<画像元>
photoAC
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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