わんことの旅行を
もっと楽しく、
もっと快適に。
メニュー
  • いいね!してね

犬の避妊・去勢はした方がいい?適正時期はいつ?【動物看護師が解説】

シェアする

愛犬の避妊・去勢について悩んだことはありますか?

獣医師さんからは生後6カ月を目安に避妊・去勢を勧められることが多いですね。デメリットよりもメリット重視で説明されることが多いと思います。

しかし、海外ではデメリットも多く指摘されており、早期の避妊・去勢を避けるべきではという論文も発表されています。

日本と海外で比較しながら避妊・去勢のメリット・デメリットを動物看護師が解説します。

国別に見るとこんなに違う!わんちゃんの避妊・去勢率

上図のように、避妊・去勢率を国別にまとめました。アメリカやカナダは避妊・去勢率が高いですね。

「将来的な病気を未然に防ぐ」「保護犬が多いため望まない繁殖を避ける」という風潮が強いからだと考えられます。

一方、スウェーデンでは、避妊・去勢に関しては肯定的ではありません。

「医学的、健康的に問題がない限り、健康な体にメスを入れたくない」「犬の行動は飼い主さんが管理すべき」という考えが一般化しており、繁殖もきちんと管理されているためです。

日本では避妊・去勢するという考え方が推奨されていますが、世界と比べて見ると全然違うのですね。

生後6カ月での避妊・去勢がすすめられるワケ

獣医師さんが生後6カ月で避妊・去勢を勧める理由をまとめてみました。

女の子の乳腺腫瘍の予防に関しては、1969年に発表された論文(参考文献※1)が元になっています。そのため多くの獣医さんは、予防のために発情が始まる前の6カ月を目安に避妊手術を勧めます。

しかし、避妊手術と乳腺腫瘍リスク軽減は年齢が高くなってもあるという文献や、元の情報が古いこと(半世紀前)、早期避妊を勧めるにはエビデンス(根拠)レベルが低いのではないかという見方もあり、早期にこだわらない動物病院もあります。

男の子の攻撃性などに関しては、のちほど詳しくご説明します。

AKCで推奨されていない!6カ月未満の避妊・去勢

AKC(アメリカの公式の愛犬家団体)は、今まで生後6カ月の避妊・去勢を推奨してきました。しかし、生後6カ月で避妊手術をした大型犬に関節異常などが多くみられることから、AKCとカルフォルニア大学デービス校獣医学部が共同研究を行いました。

その結果、図のような影響があることがわかりました。

共同研究は2010年~現在も続いており、大型犬だけに限らず小型犬の研究も進んでいます。

その中で、「避妊去勢は犬種によって異なる病気のリスクに影響する。」「性差や犬種、サイズにかかわらず、避妊去勢の影響は手術をおこなった時期に左右される。」と述べています。

このため、AKCでは見解をあらため、健康と長生きのために成熟してからの避妊・去勢を推奨しています。

男の子のわんちゃんを去勢するメリット・デメリット

日本と海外であげられている、去勢によるメリットとデメリットをまとめました。

日本のデメリットではあげられていませんが、海外では関節疾患やホルモンの影響による副腎疲労(疲れやすく元気がでない)や甲状腺機能低下(皮膚や体毛に影響)がリスクとしてあげられています。

骨は性ホルモンの影響で成長するため、精巣がとられると、ホルモン分泌が止まり骨が弱くなったり、骨格に影響がでる可能性があります。

14年半分のデータを解析した研究(ジャーマンシェパード 1,170頭)では、1歳未満で去勢したオスは去勢していないオスに比べて、関節疾患のリスクが高くなっています。

去勢が健康に与える影響は、まだ十分に解明されておらず、調べられている犬種も限定的です。

犬種によってかかりやすい病気もあるため、将来的に出てくる精巣の病気の予防とどちらを優先するのか考えて選択しましょう。

去勢で攻撃性は下がらない?!

よく去勢のメリットでこの3つがあげられます。

■攻撃性の低下
■マーキング・足をあげての排泄
■マウンティング

ある研究では、「人への攻撃性・他の犬への攻撃性は減らない。」「オス同士の競争による攻撃性であれば、60%程度は抑えられるかもしれない。」という結果がでています。

一口に攻撃性といっても、食べ物に執着する攻撃や怯えからの攻撃などさまざま。去勢をすれば、必ず攻撃性がなくなる、大人しいイイ子になるわけではありません。

飼い主さんには困る行動でも、マーキングは本能からくる重要な欲求行動です。

去勢をしてもおさまらない可能性もあるので、しつけで解決できる問題なのかと照らし合わせて、去勢をするか決めてあげてくださいね。

女の子のわんちゃんを避妊するメリット・デメリット

メリットは日本と海外は同じですが、デメリットは男の子と同じく関節疾患や副腎疲労、その他には皮膚や被毛への影響もあげられています。

また、尿失禁は避妊手術をした年齢が若いほど発生しやすく、術後半年や年齢が高くなってから発症するリスクがあると報告されています。

乳腺腫瘍や子宮蓄膿症は年齢が上がるにつれて発生頻度は高くなりますが、1歳未満で手術した場合は、関節疾患の発症率が高くなっています。

関連した病気が出ない可能性ももちろんありますが、何かを優先しようとすると別のリスクがでてくるので、一番優先させたいことは何かを考えて決めましょう。

愛犬の避妊・去勢をする適正時期は?

今までの情報や論文を総合すると、あまり早い時期の手術はデメリットも多いように感じます。

大型犬と小型犬では成長速度も違います。乳腺腫瘍などはリスクの高い病気ですが、尿失禁や関節疾患、脱毛も起きてしまうと生活の質に影響します。

飼い主さんが「何を優先するか」「何のために手術をするのか」が一番大切ですが、目安を考えるならば、上記の年齢を目安に検討してみてはいかがでしょうか?

避妊・去勢をしたことによる影響は、まだまだ未解明な部分が多く、出ている論文も限定的で全てのわんちゃんに該当するものはほとんどありません。

避妊・去勢はわんちゃんにとっても、飼い主さんにとっても一生のこと。

メリットもデメリットも幅広く知って、後悔のない選択をできる手助けになれば幸いです。

<参考文献>

・※1 Journal of the National Cancer Institute, Volume 43, Issue 6, December 1969, Pages 1249–1261

・犬と猫の乳腺腫瘍について ノウバンダリーズ動物病理

・犬の原発性心臓腫瘍の臨床および病理学的研

・Verstegen, J., and K. Onclin. “Etiopathogeny, classification and prognosis of mammary tumors in the canine and feline species.” Proceedings. 2003.

・特番・犬の去勢・避妊のメリットとデメリットについて:DOGGY STATION Vol.80

・愛犬との絆を深める散歩でマスターする犬のしつけ術 著者:田中雅織

・Endogenous gonadal hormone exposure and bone sarcoma risk.

・Gonadectomy effects on the risk of immune disorders in the dog: a retrospective study

・Pet Anti-Breeding System is answer to spay and neuter concerns

・AKC Clarifies Position Statements Related to Spaying and Neutering

・An Update on the Health Effects of Spay/Neuter in Dogs

・イヌの避妊手術が骨密度および副腎機能に及ぼす影響とその対策

・犬の去勢が体組成に及ぼす影響に関する研究

・Aggression toward Familiar People, Strangers, and Conspecifics in Gonadectomized and Intact Dogs.

・Swiss Canine Cancer Registry 1955–2008: Occurrence of the Most Common Tumour Diagnoses and Influence of Age, Breed, Body Size, Sex and Neutering Status on Tumour Development

・Endogenous gonadal hormone exposure and bone sarcoma risk.

・The effect of neutering on the risk of mammary tumours in dogs–a systematic review

・Evaluation of the risk and age of onset of cancer and behavioral disorders in gonadectomized Vizslas 

・Neutering of German Shepherd Dogs: associated joint disorders, cancers and urinary incontinence

・Long-Term Health Effects of Neutering Dogs: Comparison of Labrador Retrievers with Golden Retrievers

・Early Neutering Poses Health Risks for German Shepherd Dogs, Study Finds

・Long-Term Health Risks and Benefits Associated with Spay / Neuter in Dogs

・Spayed or neutered dogs live longer

・Reproductive Capability Is Associated with Lifespan and Cause of Death in Companion Dogs

・What is the right timing for spaying and neutering of pets?

・New Research That Raises Questions About Current Neutering Recommendations

・Neutering health effects more severe for golden retrievers than Labradors

・Gonadectomy effects on the risk of immune disorders in the dog: a retrospective study

・英国およびカナダにおける狂犬病予防と動物保護管理行政の現状

・動物愛護管理と生活・経済~行政の視点から~ 環境省 動物愛護管理室

<画像元>

無料写真素材 写真AC

イラストAC

かわいいフリー素材集イラストや

Pixabay

The following two tabs change content below.
伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
犬の避妊・去勢はした方がいい?適正時期はいつ?【動物看護師が解説】
愛犬との旅行・生活に役立つ情報をお届けします。
イヌトミィの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!

シェアする

フォローする