私たち人でもそうですが、犬にとっても欠かすことが出来ない水分補給、皆さんの愛犬は適切に摂取していますか?
脱水症状と聞くと、つい夏に多いイメージが先行してしまいがちですが、実はそうとも限りません。
この記事では、シニア犬と生活をしている飼い主さんは特に要注意の『隠れ脱水』について、その原因や主な症状、見極め方、水分を摂らせる工夫などをご紹介します。
<目次>
シニア犬に注意が必要な『隠れ脱水』とは?
皆さんは、『隠れ脱水』という言葉を耳にしたことはありますか?
『隠れ脱水』とは、身体の水分量が減っているにもかかわらず、脱水の症状がハッキリ分からず、自覚症状もあまり見られず、いつの間にか体重の1%~2%が失われている状態の事を指します。
これは、人の場合でも当然起こる危険性があるものですが、犬にも同様に起こる危険性があり、特にシニア犬に至っては、その状態が顕著になりやすい危険性があるため、夏場でなくとも注意が必要とされているものです。
中でもシニア犬では、人間のシニアの方と同じように暑さを感じにくい体質になりやすいため、意識して水分摂取させてあげることが大切です。
『隠れ脱水』は、そのまま気付かず放置してしまうと、最悪は死亡してしまう危険性があるものです。
一説では、シニア犬の病気の約9割が『隠れ脱水』が関係している、ともされています。
特に8歳以降のシニア犬には、この傾向が強く表れ始めると言われているため、水分補給をさせる際の工夫を心掛けるように意識しましょう。
シニア犬が『隠れ脱水』しやすい主な原因4つ
ここでは、シニア犬が『隠れ脱水』に陥りやすい主な原因を4つほどご紹介します。
ご自身の愛犬に当て嵌まるような項目があった際には、意識して水分を摂らせてあげたり、水分摂取への工夫をしてあげたりして、『隠れ脱水』にならないよう努めてあげてください。
▼【シニア犬が『隠れ脱水』になる主な原因】
・暑さの感じにくさ(代謝の低下)
・季節の変わり目
・飲み水の個数不足
・ストレス
それでは、詳しい内容をそれぞれ以下で確認していきましょう。
暑さの感じにくさ(代謝の低下)
犬は老化によって代謝が低下すると、上記でもお伝えしたように暑さを感じにくくなります。
そのため、自然に喉の渇きも感じづらくなり、シニア犬ではガクンと水分摂取量が低下してしまいます。
夏場は特に室内がエアコンで一定の温度に保たれ、益々水分摂取する機会を逸してしまいかねないため、飼い主さん側が意識的に水分摂取を促すよう心掛けてあげましょう。
季節の変わり目
基本的に犬は常温の水、またはそれよりも若干冷たい水を好む傾向があると言われています。
しかし、冬といった寒い季節への変化があった時、代謝が低下しやすいシニア犬の場合では、その常温の水でさえも抵抗を感じて飲まないことがあるのです。
では、なぜそう言えるのかと言えば、それは【Recent Advances in Animal Nutrition in Australia, Volume 15(オーストラリアにおける動物栄養学の最近の進歩第15巻)】という文献で示されていた研究結果で、直腸温37.8℃の犬では温水を好む傾向が強いとされたためです。
水道水の水が冷たくなりやすい冬の時期には、こうした水の温度にも気を付けてあげると良いでしょう。
飲み水の個数不足
それまでは飲み水の場所まで問題なく辿り着いていた愛犬が、シニアになるにつれあまり水を飲む姿を目にしなくなった場合には、飲み水の個数不足を疑うと良いでしょう。
シニア犬では水飲み場が1つだった場合、そこまで行くのが面倒で「喉が渇いた」と感じるまで我慢することがあります。けれど、『隠れ脱水』はそう感じてからでは既に遅い状態です。
そのため、少なくともご自身の愛犬がシニア犬に突入した7~8歳齢になった時には、どこでも水分補給が出来るよう飲み水の個数を増やすなど、工夫を凝らしてあげましょう。
ストレス
シニア犬は、幼犬や成犬以上に引っ越しや家族の増減など、環境のちょっとした変化に敏感です。そうした変化に伴ってストレスを感じた場合、水分摂取が低下してしまう可能性があります。
そのため、そういった場合には、出来る限り愛犬がリラックスできる環境を作ってあげるよう心掛け、定期的に水分摂取出来ているかを確認するようにしましょう。
シニア犬が『隠れ脱水』している時の症状って?
シニア犬が『隠れ脱水』を起こしてしまっている場合、主に考えられる症状には、以下のような症状が挙げられます。
▼【『隠れ脱水』が起こった時に見られる症状】
・口や目の粘膜が乾いたようになる
・目が落ちくぼむ印象になる
・皮膚の弾力性が失われる
・おしっこの色が濃い黄色・麦色をしている
・食欲や元気が低下する
『隠れ脱水』は、前述でもお伝えしましたが、基本的に身体の水分量が減っているのに脱水の症状や自覚症状がハッキリ見られず、いつの間にか体重の1%~2%が失われていたりする状態の事を指します。
そのため、これらの『隠れ脱水』症状を知るには、飼い主さんご自身が定期的に確かめて、その時の愛犬の状態を調べてあげることが重要です。
ただし、こうした症状は軽度~重度まで状況は様々なので、注意深く観察するよう心掛けましょう。
また、例えば上記の症状の他に、さらに「ハアハアとパンティングしている」や「嘔吐や下痢がある」、「フラフラとしている」といったような症状が見られる時には、その症状は既に重度の脱水を引き起こしているため、出来ればシリンジやスポイトで水分摂取をさせつつ、早急に動物病院へ連れて行きましょう。
『隠れ脱水』した時の見極め方は皮膚の戻り方?
愛犬の『隠れ脱水』を簡単に見極める方法に、【首の皮膚チェック】というものがあります。
これは、犬の皮膚をつまみ上げた際に元に戻る時間を計測することで、脱水しているか、していないかを見定めるものです。
仮に試してみて、すぐに戻るようなら問題はありません。
しかし、もしも愛犬が脱水していそうだと感じ、この方法を試した結果、皮膚の戻りが鈍いようなら以下に応じてそれぞれ状況を判断しましょう。
①犬の首の後ろの皮膚を軽くつまんで2~3秒で戻った場合⇒軽度
②犬の首の後ろの皮膚を軽くつまんで6~10秒で戻った場合⇒中度
③犬の首の後ろの皮膚を軽くつまんで20~45秒で戻った場合⇒重度
上記時間はあくまでも目安ですが、試してみた結果、①に該当した場合には、まずは水分摂取を愛犬に試してみましょう。それで愛犬自身が水を飲むようなら、様子を見てあげても良いでしょう。
けれど、もしその状態で愛犬が自ら水分を摂取しようとしないようなら、飲み水への工夫を凝らすか、動物病院で診てもらうことをオススメします。
また言わずもがなですが、万が一にも愛犬の状態が、②または③に該当するようなら、症状の有無に関わらず、動物病院を受診し、点滴などの適切な処置を施してもらってください。
『隠れ脱水』であれ、通常の脱水症状であれ、犬は体重の10%以上の体液を失うとショック状態に陥り、最悪は死亡してしまう危険性があります。
そのため、そうなる前に早急な対応を心掛けましょう。
シニア犬に水分を摂取させる時の工夫
活動量が多かった成犬と比べ、活動量の低下や代謝機能の低下が著しくなったシニア犬に、水分補給をさせるためには、まず何と言っても水分を自発的に摂るよう促すことが大切です。
通常、犬にとって1日に必要な水分摂取量の目安は、「体重(kg)×50~70」で計算が可能だと言われています。(※体重(g)×0.05~0.07でも可能)
筆者の3代目柴犬の場合を例に挙げれば、「7kg×50~70」となるため、結果は大体350ml~490mlが水分摂取量となります。
ただシニア犬の場合、そうは言っても思い通りに水分摂取が出来ないことが多いため、そういった場合には、主に以下のような方法を試してみると良いでしょう。
①普段の食事に肉のゆで汁やヨーグルト、また、ヤギミルクなどを入れて与えてあげる
②経口補水液(水1ℓに対し砂糖約20g+塩約1.5g)を作る
③スポーツドリンクを2倍に薄めて飲ませる
ただし、①以外の方法については、ほとんど非常時に必要となる方法なので、基本は①の方法で水分摂取を促してあげましょう。
まとめ
いかがでしたか?
『隠れ脱水』は、シニア犬に限らず、幼犬や成犬にも危険性はあるものです。
けれど、シニア犬は特に脱水気味に陥りやすいため、定期的に様子を見たり、必要な時には水分を与えてあげたり、飼い主さんはそういったサポートを出来る限り整えてあげられるよう、意識してあげてください。
<参考書籍>
決定版 犬と一緒に生き残る防災BOOK
衣|食|住|遊 楽しいひと手間が愛犬との暮らしを快適にする 老犬暮らしの便利帳
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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