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犬のヒゲは切っていいの?ヒゲカットで起きるトラブルもご紹介【動物看護師が解説】

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「猫のヒゲは切ってはいけない」ということを知っている方は多いと思います。

では、「犬のヒゲ」はどうなのでしょうか。

トリミングでカットされがちな犬のヒゲですが、実は大事な役割があります。

今回は、犬のヒゲの役割やカットをした場合に起きるトラブルをご紹介しますので、一度「犬のヒゲを切ること」について考えるきっかけにして頂ければと思います。

犬のヒゲの役割は?

犬にとって「ヒゲ」はどのような役割があるのでしょうか。

▼犬のヒゲの役割
・自分の気分や感情をあらわす
・空気の流れをよんで獲物のにおいを察知する
・障害物を感知して周りの情報を得る
・目の上のひげ(上毛)に触れると反射的に目を閉じる

犬のヒゲは一言でいうと、触れたものを察知するセンサーの役割です。

ヒゲの根元には神経が集中しているので非常に敏感で、空気の流れのようなわずかな刺激でも機敏に察知することができます。

また、犬が何かに近づいたり匂いを嗅ごうとするときは、まずヒゲを前方に動かして感触を確かめようとします。

犬は視力があまりよくないので、ヒゲの感覚が「安全か危険か」を判断するための材料になっているということですね。

このように犬のヒゲの役割を見ていくと、犬にとって情報を得るために大切な器官だということがわかってきます。

では、そんな重要なヒゲはトリミングなどで切ってしまってもよいのでしょうか。

犬のヒゲをカットしてはいけないの?

結論から申し上げますと、「切らない方がよい」です。

どうしても切りたいという場合は、根元から切らずに毛先を整える程度におさめておきましょう。

ヒゲを切らない方がいい理由は「2つ」あります。

▼犬のヒゲをカットしない方がいい理由
①ヒゲ付近は敏感なので触られるのを嫌がる
➁ヒゲの位置を特定できる脳機能がある

①ヒゲ付近は敏感なので触られるのを嫌がる

皮膚にはいろいろな触覚センサーがありますが、優しい刺激にも敏感に反応して刺激を伝える「メルケル細胞」というものがあります。

メルケル細胞の密度が濃ければ濃いほど敏感なのですが、犬を調べてみると体と比較して犬の顔周り、特に上あご付近の密度が非常に濃いということがわかったそうです。

▼犬のメルケル細胞の分布図(数字が大きいほど密度が濃い=敏感)

上の分布図を見てみると、鼻まわりの数字が他の場所と比べて非常に高くなっているのがわかりますね。

つまりヒゲが生える場所は非常に敏感なので、触られると「嫌だなぁ」と感じる場所なのです。

➁ヒゲの位置を特定できる脳機能がある

犬の触覚に関わる脳の領域を調べてみると、触覚情報に関する脳領域の多く(およそ40%)が顔まわりの情報を担当していたそうです。

また、1本1本のヒゲの位置を特定できる脳機能があることもわかりました。

つまり、犬にとってヒゲというのは、1本1本の位置を把握しておくほど大切な感覚器官で、ヒゲから得られる情報は重要であるということなのです。

犬のヒゲをカットする理由は?

今までの内容を見ていくと、犬にとってヒゲは重要な感覚器で気軽にカットしてはいけないというのがおわかり頂けたと思います。

では、どうして犬のヒゲはカットされてしまうことが多いのでしょうか。

理由は「2つ」あります。

▼犬のヒゲをカットする理由
・見た目を整えるため
・カットしても影響が少ないと考えられている

ヒゲをカットすると口元がスッキリするので、見た目を重視してカットされることがあります。

また、犬は嗅覚が発達しています。そのためヒゲからの情報が減っても視覚や嗅覚などでカバーをできるため、影響が少ないと考えられています。

たしかに野生で生きていたときのように、感覚をフルに使わないと命が危ないということもありませんし、適応力があるのでヒゲが切られても日常生活を送ることは可能です。

ただ、カットをしてしまったことでおきるトラブルもあります。

ヒゲをカットすることで起きるトラブル

先程、ヒゲの情報が減っても視覚や嗅覚でカバーをするとお話しをしましたね。

そのため「薄暗い環境」「視力が弱った犬」「シニア犬」は視覚や嗅覚からの情報が乏しいため、ヒゲを切ってしまうと物にぶつかったり段差で転ぶといったトラブルが起きることがあります。

実際に目の見えない犬のヒゲをカットしたら、家の中でぶつかるようになってしまったという事例もあるそうです。

特にシニアになるとヒゲが短くなったり、抜けてしまったり、細くなってただでさえ周りの情報をキャッチしにくくなります。

普通の犬でもヒゲを切ることはオススメしませんが、視力が弱った犬やシニア犬の場合は、絶対にヒゲは切らないようにしましょう。

最近はトリミングのときにヒゲをカットしないトリマーさんも増えてきました。

ヒゲは犬にとって大事な感覚器であり、視力が弱った犬やシニア犬に取っては周りの情報を得るための頼みの綱になります。

切る理由が「見た目」だけなのであれば、自然なまま生やしてあげてもいいのかなと思います。

ぜひこの機会に、「犬のヒゲを切ること」について考えて頂ければ嬉しいです。

<参考書籍>

犬も平気でうそをつく? Stanley Coren (原著), 木村 博江 (翻訳)

<参考URL>

Why Do Dogs Have Whiskers?
>https://www.psychologytoday.com/intl/blog/canine-corner/201109/why-do-dogs-have-whiskers

Anatomical Mapping and Density of Merkel Cells in Skin and Mucosae of the Dog
>https://anatomypubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ar.23387

高度な触覚センサとして活躍する小さな細胞
>https://www.brh.co.jp/publication/

<画像元>

Unsplash

写真AC

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。