犬を迎えれば、誰でも一度は経験する『叱る』という行動。
その結果犬が反省したような仕草を見せると、つい「反省してくれた」と感じる飼い主さんは多いと思います。しかし、犬の場合その反応が必ずしも反省した態度とは言い切れないのをご存じですか?
今回は、犬を叱った時の犬の反省の捉え方や反省しているように見えて実は反省していない行動、それを踏まえた改善法などをご紹介します。
犬の反省は人とは違う?

犬と生活をしていると、誰でも一度は叱るような場面に出くわすことがあります。
特に犬を迎えてすぐは、トイレの失敗や部屋に置いてある物へのイタズラなどが目立つため、飼い主さんからするとつい強い口調で叱ってしまう、なんてことは珍しくありません。
しかし、互いに慣れない環境からくる不安で“叱る”と“叱られる”という構図が出来上がっても、その後に見られる【反省】については、人と犬では思考による違いが生じます。
人の場合、自分が叱られると他人の考えていることや、それによる自分の相手からの印象を考えて、他人の気持ちを推し量ることが可能です。
しかし犬の場合、怒気や口調の強さから飼い主さんが怒っている雰囲気を読み取ることはできても、何に対して自分が叱られているのかは、時間が経てば経つほど分からなくなってしまう動物です。
その証拠に、部屋を散らかして叱られたことがある犬が、別の誰かが散らかした部屋に入って、飼い主さんの存在を確認すると、その犬は自分が散らかしたわけでもないのに反省したようなポーズを取ることがあります。
そのため、よく犬を叱るときに【現行犯】と言われるのは、このせいです。
様々な研究から、犬が人の感情を読み取る能力があることは間違いありませんが『叱られている=反省が必要』だとする解釈まで犬ができているかと言えば、そこまで複雑な感情を読み取れる愛犬は、基本的にはいないと思った方が良いでしょう。
反省したように見えて反省してない犬の主な行動

では、犬が反省しているように見えて実は反省していない主な行動を、ここでは3つほど見ていきましょう。
聞いたことがある行動もあれば、「初めて聞いた!」という行動もあると思いますので、ご自身の愛犬にも照らし合わせて見てみてくださいね。
実は犬が反省していない行動①:手を咬んだ後に舐める
犬との関わりの中で、思いがけず犬に手を咬まれてしまった後、すぐにその手を舐められた経験などはありますか?
例えば嫌いな爪切りをしようとしたらガブッ、嫌いなお風呂に入れようとしたらガブッ、というように、愛犬が何かしら嫌がるような行動を飼い主さんが取った時、防衛行動を起こした後に愛犬が手を舐めてきたような場合、それは「ごめんなさい」を意味する反省や謝罪ではなく「今度は同じことしないでね?」という牽制の意味合いが含まれています。
手に咬みついたわけではない場合は、それに限った意味合いではなく“反省”や“謝罪”も含まれていることがありますが、少なくとも手を咬んだ後に愛犬がその手を舐めるような場合には、実は反省していない可能性が高いでしょう。
実は犬が反省していない行動②:上目遣いで眉をひそめる
買い物や仕事から帰ってきて玄関を開けた時、部屋中が愛犬のイタズラで散らかり放題、それを叱ったら眉をひそめたように見上げられた経験はありませんか?
上目遣いで、いかにも『ごめんなさい…、反省しています』といった表情のため「反省した?」と感じてしまいそうですが、実はこの表情も別に反省して見せている表情というわけではありません。ましてやこの表情については、実験で証明されているようで、犬はただ飼い主さんのその緊迫した態度にストレスを感じているだけ、というのが分かったというのです。
イヌ科の祖先であるオオカミには、この眉をひそめるといった表情筋自体が発達していないと言われており、こうした表情は、犬が人との関わりで自然と発達させた表情の一つとされています。
実は犬が反省していない行動③:フリーズする
愛犬を叱っているとき、ジッと話を聞くように身を固めて、動こうとしない姿を愛犬が見せたことはありませんか?
フリーズしている姿は、さも『話を聞いています、ごめんなさい』という感じに見えるため、「しっかりと話を聞きつつ、反省の色も見えるな」と感じてしまいそうですが、実はこの行動も別に反省しているわけではなく、ただその場をやり過ごそうとしてフリーズしているだけだと言われています。
犬は、自分よりも体格の大きい犬や威圧的な態度を取る人に対してフリーズすることがあり、犬の場合であればその犬が次の“獲物”に移動するまで、人の場合であればその人が落ち着く(嵐が過ぎ去る)まで、その場から動かずジッとして、やり過ごそうとします。ただ、これが反省に直結しているかと言えば、「今、目の前の飼い主は恐ろしい化け物のようになっている。動いたら殺されるかもしれない」という感覚のため、反省よりも恐怖心からくる野生の本能と言った方が、しっくりくるでしょう。
犬を反省させることは不可能なの?

表面上反省しているように見える犬の表情や仕草ですが、しっかりと犬を反省させることは不可能なのでしょうか?
結論から先に申し上げると、基本的には難しいでしょう。
そもそも犬の社会で別の犬に怒られる場面は、社会的序列(覇権{リーダー}争い)が関係するときだけです。
犬同士で競争するなどの必要性がない人との関係性においては、愛犬自身が部屋を散らかしたり、粗相をしたりというのは、通常犬にとって全然問題となることではありません。
にもかかわらず、親の立場である飼い主さんが、時が経ってから、もしくは怖い表情をしながら何かを強い口調で訴えかける姿は、犬からすれば恐怖や不安でしかないのです。
筆者もこれまで何度か愛犬に強い口調で叱ったり窘めたりしたことがありましたが、そのどれもが反省というよりも不安から落ち着かせようとする仕草が多かったように思います。
犬は、相手の怒りや興奮のボルテージを下げるための行動として、欠伸をしたり、お腹を見せたり、手や足を舐めてきたりすることがあります。ただしそうした行動は、あくまでも飼い主さんを落ち着かせるためであって『反省しました、もうしません』という意思表示ではありません。
犬は基本的に平和主義者です。
そのため、犬の反省を促すのではなく、犬自身が『これはやっても意味がない』と思う形に持っていくことを心がけましょう。
『反省』ではなく学習させる改善方法って?

犬は基本的に、自らが取った行動で望ましくない反応が起こった場合、その頻度を減らす傾向が強くあります。
これは、アメリカの心理学者スキナーが提唱したオペラント条件付けの理論を活かすことで、人にとって望ましい行動を増やしたり(強化)、減らしたり(弱化)することが可能です。
▽『犬のオペラント条件付け構成図』
参考元:気持ちを知ればもっと好きになる!犬の教科書|東京農業大学教授 増田宏司(監修)|画像:筆者作成
この方法は、タイミングよく行い、タイミングよく教える必要があるため、コツを掴むまではなかなか難しい面があるかもしれません。
また正/負というのも、基本的には+-(プラス、マイナス)を意味していて、犬が起こした刺激が出現しやすくなることが「正」、刺激が減少してきたことが「負」となる、と理解すれば問題ないのですが、こちらもやはり慣れるまではなかなか難しいかもしれません。
しかし、こうした難しい考え方をせずとも、例えば冒頭でご紹介した犬が起こしてしまいやすいトイレの失敗や部屋のイタズラなどは、これといった反応をせずに無視をして静かに片付けるというのも、現象の弱化を促すのに効果的です。
また、犬の場合叱るときは端的に短く「ダメ!」や「コラ!」といった言葉を低音で行わないと意味がないと言われているため、それが難しい場合には、こうした方法を徹底的に意識して行いましょう。
犬自身が“反省”というもの自体の理解をすることは難しいですが、こうした点に注意しつつ犬の望ましくない行動を制限するときには端的に、望ましい行動をした時には目一杯褒めるということを繰り返し行うことで、犬の反省を促す必要なく、状況の改善を心がけると良いでしょう。
まとめ

人の“反省”という概念がない犬の場合、私たち飼い主にとって望ましくない行動は、根気良く改善していくほかありません。
時にはそれが難しくて、愛犬に強い口調で当たってしまったりすることもあるかもしれませんが、愛犬と良い関係を続けていくためには、共に学ぶような姿勢で、お互いがお互い悲しまない改善方法を心掛けてあげてくださいね。
<参考書籍>
気持ちを知ればもっと好きになる!犬の教科書|東京農業大学教授 増田宏司(監修)
教養としての犬 思わず人に話したくなる犬知識130|菊水健史(監修)|富田園子(著)
カーミングシグナル 理論と犬のストレスを軽減するための実践的応用|トゥーリッド・ルーガス|石綿 美香(翻訳)
<画像元>
Canva
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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