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犬の「てんかん発作」ってどんな病気?原因と飼い主さんが気をつけることは?【動物看護師が解説】

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犬の「てんかん」という病気をご存じでしょうか?

100頭に1頭は「てんかん」を持っていると言われるほど、意外と私たちの身近にある病気です。

しかし初めて発作を目撃した飼い主さんは、発作の様子から非常にショックを受けたり不安になったりする方が多いです。

愛犬がもし「てんかん」を起こしたときに、パニックにならずに何をすればいいのか、一緒に学んでいきましょう。

犬の「てんかん」ってどんな病気?

まず「てんかん」について知るために、犬の体がどのようにして動いているのかを知っておきましょう。

体を動かそうとすると、

①まず、脳から「動いて!」という電気信号が神経を通じて筋肉に送られてきます。

②その電気信号を受け取った筋肉は、「ギュッ」と伸び縮みをして体を動かしていきます。

では、この電気信号を出している脳に異常が起きたらどうなるでしょうか?

てんかんは脳神経に異常な興奮が起こり、体のコントロールを失ってしまう病気です。

脳が興奮状態にあるため、電気信号が乱れたり上手く伝えられず、「全身が硬直する」「両足をバタバタさせる」「体の一部がけいれんする」といったてんかんの症状があらわれます。

犬の「てんかん」発作の原因は?

では、この「てんかん」発作はどうして起きてしまうのでしょうか?

てんかんは大きく分けると「3つ」に分類されます。

発生原因がそれぞれ異なるので、ひとつずつ見ていきましょう。

▼「てんかん」の原因は?
①突発性(とくはつせい)てんかん
➁症候性(しょうこうせい)てんかん
➂反応性発作

①突発性(とくはつせい)てんかん

さまざまな検査をしても原因が特定できない「てんかん」のことをいいます。

脳を調べても特に異常は見当らないが、「てんかん」の発作が定期的に起きてしまう状態です。

遺伝的な要素が関係しているのではないかと言われていますが、詳しいことはまだわかっていません。

➁症候性(しょうこうせい)てんかん

症候性てんかんは、「脳への外傷」「脳の病気(脳炎・水頭症・脳梗塞・脳腫瘍など)」によって、二次的に「てんかん」を引き起こしてしまいます。

外傷や病気を治療をすると「てんかん」の症状を抑えることもできますが、原因が治っても「てんかん」の発作だけ出続けてしまうこともあります。

➂反応性発作

こちらは厳密にいうと「てんかん」と同じ分類では無いのですが、脳以外に原因があって、「てんかん」発作を起こしてしまうこともあります。

低血糖や腎臓病、栄養不足などが原因で「てんかん」の症状を引き起こします。

覚えておきたい!「てんかん」発作の種類

どうして「てんかん」を起こしてしまうのか、原因がお分かりいただけたところで、次に「てんかん」発作の種類についてお話ししていきます。

原因と同じく発作にもいくつか種類があります。発作の状態や回数によって危険度が変わるので、しっかりと症状と種類を覚えておきましょう。

「てんかん」の発作は大きくわけると「2つ」に分かれます。

▼「てんかん」発作の種類
①焦点性発作(脳の一部が興奮している状態)
➁全般発作(脳全体が興奮している状態)

①焦点性発作(脳の一部が興奮している状態)

脳の一部だけが興奮状態になり、その興奮が起きている場所と関連する体の一部に症状が現れます。

例えば、後足の動きに関係する場所に興奮が起きると後足だけ痙攣したようにバタバタ動きますし、意識に関係する場所に興奮が起きると顔面がひきつったように痙攣を起こします。

他にも「呼びかけても反応しない」「大量によだれを流し始める」「しっぽを追いかける」といった行動もよく見られます。

➁全般発作(脳全体が興奮している状態)

脳全体が一斉に興奮している状態です。焦点性発作と違って、体の一部ではなく体全体に症状が現れます。

意識を失い全身を激しく「けいれん」させたり、両手両足をピーンと突っ張ったように硬直させたり、両手両足を激しくばたつかせたりします。

「口から泡をふく」「失禁する」「鳴き声をあげる」といった症状がみられることもあります。

通常であれば2、3分で元の状態に戻りますが、発作後もウロウロと歩き回ったり、ぼんやりしているといった状態が長く続いてしまう子もいます。

そして「焦点性発作」の場合でも「全般発作」の場合でも、下記のような症状が現れたら非常に状態が悪いので、すぐに動物病院を受診してください。

▼特に注意が必要な場合
・24時間以内に2回以上発作が起こった
・数日のうちに何度も発作を繰り返す
・1回の発作が5分以上続いている
・意識が戻らないまま発作が継続して起こっている

愛犬が「てんかん」発作をおこしたら、飼い主さんにできること

てんかん発作を目の当たりにした飼い主さんは、ショックを受けてパニックになってしまうことが多いです。

「何かしてあげなきゃ」と思うかもしれませんが、発作中にやってはいけないこともあります。

では、愛犬がもし「てんかん」発作を起こしたら、飼い主さんがとるべき行動は何でしょうか。

▼飼い主さんが取るべき行動
・愛犬の安全の確保
・発作の様子を記録する

愛犬の安全の確保

意識を失って痙攣している最中は、体のコントロールが効きません。物に頭をぶつけたり段差から落ちてしまわないように、周りの物をどけるなど愛犬の安全を確保してあげてください。

散歩中や外出時など外で発作が起こった場合は、事故や怪我をしそうな場所であれば移動させてあげましょう。

▼発作中にやってはいけないNG行為
痙攣をしているからと体を押さえつけたり抱きしめたりすることは止めましょう。
また、「大丈夫?」と強く体をゆする行為もNGです。
無理に触れたりすると、飼い主さんが怪我をしてしまったり発作がより激しくなることがあります。

発作の様子を記録する

発作中の様子や発作の時間を知ることは「てんかん」の診断をするうえで、とても重要な情報になります。

発作を見るととても動揺してしまいますが、今後の治療方針を決めていく上で大事なことなので下記ポイントしっかり記録するようにしましょう。

▼診断する上で重要なポイント
・発作が起こった日時
・どんな状況で発作が起きたか(食後や運動後など)
・発作中の様子(全身に症状が出たか、部分的か)
・意識があったか否か(声掛けに反応するなど)
・発作が続いた時間と元の状態に戻るまでにかかった時間
・発作が収まった後の様子

いざ記録しようとすると、記憶があいまいになってしまうこともあるので、発作が始まったら動画を犬の様子を撮影しておくと、獣医師さんに状態を説明するときに役立ちます。

てんかんは発作を繰り返すことで病気が進行し、治療が遅れれば命を落とすこともある病気です。

「もしかして、てんかん発作かも」と思ったら、早めに動物病院で診察を受けてくださいね。

<参考URL>

【てんかん】特許登録「モニタリングシステム」で患者と家族の負担軽減を目指す【麻布大学附属動物病院・神奈川】
>https://frenchbulldog.life/column/34631

<参考書籍>

小動物獣医看護学 小動物看護の基本と実践ガイド 上巻・下巻 西田 利穂 (翻訳), 石井 康夫 (翻訳), D.R.Lane B.Cooper

<画像元>

Unsplash

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。