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「歯石を取らないとどうなる?」歯石を除去するタイミングは?【動物看護師が解説】

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犬の「歯石取り」に悩んでいる飼い主さんは多いですね。

ふと「歯石って定期的にとらないとダメなの?」「歯石を取らなかったらどうなるんだろう」と思ったことはありませんか?

中には「麻酔をかけてまで歯石って取るべき?」と悩んでいる方もいるかもしれません。

今回は「歯石を取るタイミング」と「歯石を放置するとどうなるか」についてお話ししていきたいと思います。

犬の「歯石」取らなかったらどうなるの?

口臭は気になるけれどご飯もちゃんと食べられるし、歯石が付いたままでもいいのではと思うかもしれませんが、今は症状に現れていなくても後に大きなトラブルを起こす可能性があります。

では、歯石を取らなかったらどんなトラブルが起こるのでしょうか?

歯石を取らなかったらどうなる?
●歯肉に「穴」があきます
●ほっぺたや目の下に「穴」があきます
●鼻から出血が見られるようになります
●顎(あご)が骨折しやすくなります
●臓器に悪影響を与える可能性があります

強烈なキーワードが並んでいるので、ギョッとされた方もいるのではないでしょうか。

詳しくひとつずつ見ていきましょう。

歯石を放置すると!「歯肉に穴があきます」

歯石を放置すると「歯周病」になるというのはよく聞きますね。

歯肉に穴が空くのは、その歯周病がとても悪化してしまった状態です。

歯に歯石がつくと、歯ぐきに炎症が起こります(これが歯肉炎です)。

歯ぐきが炎症で腫れると、歯周ポケットが深くなります。

口の中にはさまざまな菌がいますが中には酸素が苦手な菌もいて、酸素に触れないように歯周ポケットの中に潜り込みます。

そしてより酸素に触れないように、歯周ポケットの奥へ奥へと周りの組織を壊しながら穴を掘って進んでいきます(これが歯周病です)。

そのままにしていると、どんどん奥に進むので歯ぐきに穴を空けてしまいます。

歯石を放置すると!「ほっぺたや目の下に穴があきます」

先ほど酸素が苦手な菌は、歯の奥へ奥へ穴を掘りながら進んでいくとお話ししました。

口の近くには、目やほっぺたがありますね。

頬の骨まで菌が溶かしながら進んでいくので、ほっぺたや目の下に穴が空いてしまいます。

血や膿が空いた穴から出できてしまい、非常に痛々しい状態になるだけでなく皮膚が壊死するとほっぺたが腐ってしまうこともあります。

歯石がひどくて犬の頬に「黒いアザ」のような物が見られたら、要注意です。

歯石を放置すると!「鼻から出血が見られる」

犬は口と鼻を隔てる骨が非常に薄いです。

そのため、歯周病で口と鼻を隔てる骨が溶けてしまうと、菌が空けた穴が鼻側に繋がってしまいます。

そうすると犬がくしゃみをしたり鼻水が出た拍子に、血や膿が出てくるといった症状が現れます。

歯石を放置すると!「顎(あご)が骨折しやすくなります」

歯周病は骨を溶かして、奥へと進んで行きます。

顎の骨が溶かされてしまうと、非常にもろくなります。

硬い物を噛んだり、口を押さえるなどの軽い衝撃で簡単に顎が骨折するようになってしまいます。

歯石を放置すると!「臓器に悪影響を与える可能性がある」

歯周病が歯の組織を壊す過程で出血をします。

出血をするということは、血管が傷つけられているということです。

その血管から菌や菌が出す毒素が入り込み、血流にのって全身をめぐります。そして行きついた臓器でさまざまな悪さをします。

人でも歯周病が原因で全身疾患が起こると言われていますが、犬にも同じような影響がでると考えられています。

歯周病というと「歯がグラグラする」「歯が抜ける」というイメージが強いですが、悪化すると「歯」以外にも恐ろしい症状を引き起こしてしまうのです。

犬の歯石除去のタイミングは「歯石がついていたら」ではない?!

歯石を放置すると、どんなことが起きるのかおわかり頂けたかと思います。

デメリットが多くて、歯石がついたらすぐに取らなくてはという気持ちになりますね。

しかし、歯石を除去するタイミングは「歯石がついたら」というわけではありません。

歯石がついていても、歯石取りをしなくても良い場合もあるのです。

では、歯石取りはどのような時に必要なのでしょうか?

歯石取りが必要かどうかの判断は「歯肉炎が起きているかどうか」を基準に行います。

先ほど歯肉炎と歯周病のお話しをしましたが、どのような状態か覚えていますか?

●歯肉炎→歯の周囲の歯ぐきが腫れている状態
●歯周病→歯肉炎が悪化し、歯を支える骨にまで影響が出ている状態
(歯周病は歯の周りに炎症が起こっている病気の総称で、正確には歯周炎)

「歯肉炎」は軽度の炎症ですが、放っておくと「歯周病」に進化してしまいます。

そのため「歯肉炎」の内に処置をしておくことが大切で、処置方法の一つが「歯石取り」です。

そのため、もし歯石がついていても歯肉炎を起こしていなければ、様子を見るという判断になることもありますし、逆に歯石が少なくても「歯肉炎」を起こしているようであれば、早めの処置が必要になります。

「歯石がない」=「歯周病ゼロ」ではない

ここまでの内容で「歯石取り」は歯周病予防に大切という事がわかりましたね。

しかし、もう一つ大切なことがあります。

「歯石がない」=「歯周病にならない」というわけではないという事です。

今まで歯石を取ることが大事とお伝えしていたので「どういうこと?」と思われるかもしれませんが、最初に「酸素が嫌いな菌」の話をしたのを覚えていますか?

酸素が嫌いな菌たちは、酸素に触れないように歯周ポケットや歯の隙間に潜り込みます。

そして歯周ポケットをケアしないと、どんどん奥へと潜り込んでいき「歯周病」を発症させます。

つまり歯石だけではなく歯周ポケットも綺麗にしなければ、歯周病は発症してしまうということです。

▼写真のわんちゃんは、定期的な無麻酔歯石取りを行っていたそうです。

一見歯石がなくきれいに見えますが、歯周ケアができていなかったため歯周病が進行しており19本抜歯となりました。

歯石がついていると歯石を綺麗にしなくてはと思ってしまいますが、歯の汚れだけでなく歯周ポケットも綺麗にすることが大切ですし、歯石がついていないからと安心しないようにしましょう。

歯石取りは麻酔のリスクが付きまとうので、決断できずにそのままという方もいらっしゃるでしょう。

しかしそのまま放置していると、頬に穴が空いたり骨折しやすくなるなど、別の症状もまねくことになってしまいます。

定期的に検診をして歯石を除去するタイミングをしっかり獣医師さんと話し合って決めることが大切ですね。

<参考文献>

イラストでみる犬の病気
編集 小野 憲一郎 今井 壯一 多川 政弘 安川 明男 後藤 直彰

<参考URL>

歯科の治療例 フジタ動物病院
>http://www.fujita-animal.com/dental/dentalcase

『歯周病を放っておいたらどうなるの?』サーカス動物病院
>https://www.instagram.com/p/B7TKNEepkzH/

日本臨床歯周病学会 歯周病が全身に及ぼす影響
>https://www.jacp.net/perio/effect/

<画像元>

Unsplash

写真AC

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。