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「犬の熱中症は死亡率が高いってホント?」初期症状と熱中症のリスクが高い犬種もご紹介【動物看護師が解説】

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毎日うだるような暑さが続いていますね。

この時期に気をつけなければならないのが「犬の熱中症」です。

耳にすることも多い病気ですが、実は死亡率も高く、重症化すると後遺症も残ってしまう恐ろしい病気です。

そこで今回は、「覚えておきたい熱中症の初期症状」や「熱中症になった時の対処法」をお話ししていきますので、愛犬の健康管理にぜひお役立てください。

本当に怖い「熱中症の合併症と死亡率」

重度の熱中症にかかったときの犬の死亡率は「36~46%」ほどと推定されています。

約半数の犬が命を落とす危険があると考えると、非常に恐ろしい数字ですね。

また、熱中症の怖いところは危険な合併症も引き起こすところです。

▼重度の熱中症が引き起こす合併症
・循環不全(血液の循環が悪くなり、脳や組織が酸欠になる)
・呼吸不全
・急性腎障害(脱水で腎臓への血液量が減ったり、高熱で筋肉が壊れて腎障害が起きる)
・血液凝固障害(血液が固まりにくくなる)
・中枢神経障害(高体温や脳への血流不足で脳や脊髄がダメージを受ける)

熱中症が進行すると上記のような合併症を引き起こし、死に至ります。

熱中症は時間とともにジワジワと進行するため、動物病院に運んでいる間に病態が悪化し、着いた頃には手遅れになっていたり、後遺症が残ってしまうこともあります。

つまり、愛犬を熱中症で亡くさないためには「①熱中症を予防すること」「➁熱中症のサインに早めに気づくこと」「➂熱中症を重症化させないこと」「④迅速に応急処置を行うこと」の「4つ」がなによりも重要ということですね。

次章では、「覚えておきたい、熱中症のサイン」についてお話ししていきますので、一緒に覚えていきましょう。

覚えておきたい「熱中症の初期~重度までの症状」

先ほど熱中症が重症化したときの死亡率は高い、とお話ししましたね。

そのため、飼い主さんがいかに早く熱中症のサインに気づけるか命の分かれ道になります。

▼熱中症の症状(初期・軽度)
・口を大きく開けて苦しそうに「ハァハァ」呼吸する
・よだれを垂らす
・目や口の粘膜が赤くなる
・落ち着きがなくなる

▼熱中症の症状(中度)
・嘔吐
・下痢(血便が起きる場合もある)
・ふるえ
・呼吸困難

▼熱中症の症状(重度)
・ぐったりしている
・意識がない
・けいれんを起こす

体温が40℃を超えると熱中症の危険があると言われていますが、犬の場合もともとの体温が「38℃~39℃」ほどあります。

つまり体温が1℃~2℃ほど上がるだけで、熱中症になる危険性がグッと高くなります。

加えて人のように汗がかけないので、上手に体温を下げることも苦手です。

いかに犬が熱中症にかかりやすい動物なのかがよくわかりますね。

犬が「ハァハァ」荒く呼吸をしていたり、よだれを垂らしていると「暑いからかな?」とつい見逃しがちになりますが「呼吸の荒さ」や「大量のよだれ」は熱中症の初期症状です。

愛犬からの「苦しいよ」というサインなので、すぐに対応してあげるようにしましょう。

熱中症になりやすい犬種と特徴

これまでの内容で「犬は熱中症にかかりやすい」ということがお分かり頂けたと思いますが、その中でも特に注意が必要な犬種や特徴を持つ犬がいます。

下記のような特徴を持つ犬は、熱中症のリスクが特に高いので、熱中症予防をしっかり行うとともにいざという時の対処法も覚えておくことが大切です。

熱中症にかかりやすい犬の特徴6つ

①短頭種

犬は汗をかけないので呼吸で体温を下げます。

しかし短頭種の場合、気道がせまいため、呼吸による体温調節が苦手です。

フレンチブルドッグ、パグなどの短頭種は他の犬種よりも熱中症になるリスクが高いと考えてください。

➁北方犬種

原産地が北方の犬種(ハスキー、アラスカンマラミュートなど)は、寒い環境でも過ごせるように熱を体から逃がしにくい構造をしています。

そのため、他の犬種に比べて暑さに弱く、熱中症にかかりやすい犬種です。

➂足が短い犬種・小型犬

地面に近い環境で過ごすと、地表からの熱の影響を受けやすくなります。

そのため、地面に近い位置にいる足が短い犬種(コーギー、ダックスフンド)や小型犬は、熱中症のリスクが高くなります。

④肥満

肥満の犬も熱中症のリスクが高くなります。

皮下脂肪が多いと体内の熱を逃がす効率を下げてしまうので、体内に熱がこもりやすくなります。

➄疾患がある

腎不全や糖尿病にかかっている犬は、脱水傾向にあるので、他の犬よりも熱中症に注意が必要です。

また、心臓病や呼吸器疾患がある犬も、熱中症が重症化しやすいので気をつけましょう。

⑥認知症を患っている

認知機能が衰えているので、水がある場所を認識できなかったり、長時間吠え続けることによって脱水症状を起こすことがあります。

また、家具の隙間などから長時間脱出できず、脱水症状を引き起こすこともあります。

熱中症に陥りやすいので、食事と一緒に水分をとるなど、熱中症対策をとるようにしましょう。

愛犬が熱中症になった時の対応は?

では愛犬が熱中症になってしまったら、どのような対応を取れば良いのでしょうか。

「一般財団法人日本気象協会」が行った犬の熱中症に関する調査によると、「愛犬が熱中症にかかった時の応急処置について」は下記ような結果になりました。

▼犬が熱中症にかかった場合の応急処置で、知っていることを全て教えてください

(飼い主さん325人が回答)

「少しでも異変を感じたら動物病院に連れていく」と答えた方は半分以下の47.7%で、「具体的な応急処置を知らない」と答えた方は20%にものぼりました。

約5人に1人が愛犬が熱中症になってもどう対応して良いかわからない、約半数の人が異変を感じても動物病院に連れて行かない、という現状は非常に危険な数字だと思います。

熱中症の症状が見られたら、すぐに下記の対処法を取りましょう。

▼愛犬が熱中症にかかったら、飼い主さんができること
・涼しい場所で休ませる
・意識があれば、水を飲ませる(意識がなければ無理に飲ませない)
・体全体に水(常温でOK)をかけて冷やす
・水で濡らしたタオルで体を包む
・首、わきの下、後足の付け根などの太い血管を冷やす
・うちわなどで風を送る

▼対処法の注意点
応急処置の際に、早く体温を下げようと冷水や氷を使って冷やしてしまうと、末梢血管が収縮して、逆に体温が下がりにくくなり臓器にダメージがいきやすくなるそうです。
冷やすときは常温(体温より低ければOK)の水で冷やすようにしましょう。

応急処置をとったら、すぐに動物病院に行って診察を受けましょう(事前に電話をしておくと、到着後すぐに処置ができるので◎)。

熱中症の合併症である「血液凝固障害」は発症から動物病院の受診まで90分以上かかった場合、発症リスクが高まるというデータがあります。

また、応急処置によって犬の状態が回復していたとしても、見た目ではわからない臓器のダメージが多かれ少なかれ起こっています。

その後、容体が急変するという事も十分考えられるので、応急処置をとったらすぐに動物病院に行くようにしましょう(発症後90分以内が目安ですが、なるべく早めに)。

暑くなると「熱中症に注意」という言葉はよく聞きますが、熱中症が起きたときの対処法はまだまだ認知度が低いことがわかりました。

熱中症はどの犬にも起きる可能性があり、死亡率も高い病気です。

今回ご紹介した内容を覚えて、今年の熱中症予防に活かしてみてくださいね。

<参考URL>

犬と猫の熱中症に関する調査
>https://www.ipet-ins.com/info/14626/

熱ゼロ研究レポート 飼い主に聞いた「愛犬の熱中症」に関する調査
>https://www.netsuzero.jp/netsu-lab/lab08

<参考文献>

Heat stroke in dogs: A retrospective study of 54 cases (1999-2004) and analysis of risk factors for death

<画像元>

Unsplash

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伊藤さん

伊藤さん

・倉敷芸術科学大学 生命動物科学科卒業
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手

やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。

大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。

愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。

「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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