愛犬との散歩は楽しい時間ですが、愛犬が急に立ち止まったり、違う方向へ行きたがることがあります。
「早く歩いてよ」「またわがまま言って」とつい思ってしまう行動ですが、実は愛犬なりの理由があります。
今回は、散歩中に歩かないときの愛犬の気持ちと、上手な対処法をご紹介します。
散歩中の飼い主の役割もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
愛犬が散歩中に歩かなくなるのはなぜ?

愛犬が散歩中に急に座り込んだり、立ち止まって歩かなくなるときがあります。
声をかけても引っ張っても歩こうとしないのは、いったいなぜなのでしょうか。
考えられる理由は4つあります。
▼愛犬が散歩中に歩かなくなる4つの理由
①愛犬のペースと飼い主さんのペースがあわない
②抱っこをしてほしい
③痛みや体の不調
④行きたくない、帰りたくない
①愛犬のペースと飼い主さんのペースがあわない
散歩のスタート直後はハイテンションで勢いよく歩くのに、しばらくすると急に立ち止まったり歩かなくなることがあります。
一見、気まぐれやわがままに見える行動ですが、愛犬の散歩スタイルなのかもしれません。
人は「散歩=一定のペースで歩く」と考えがちですが、犬は自分のなりの散歩スタイルを持っていることがあります。
▼犬の散歩スタイル例
・行きはダッシュして帰りはのんびり歩きたい
・最初は匂い嗅ぎに集中し、後半に歩きたくなる子
・今日はゆっくり歩くけど、別の日は元気いっぱいに歩く
散歩スタイルは毎日一緒ではなく、気温や湿度、路面の熱さ、前日の疲れなども影響するため、昨日と今日で全く違ったり、同じ距離でもついて来られないことも珍しくありません。
「立ち止まる=わがまま」ではなく、「今日はこのペースで歩きたいのね」と捉えてあげることも大切です。
②抱っこをしてほしい
子犬のときに外の世界に慣らすために抱っこをしてお散歩することがありますね。
子犬が動かなくなったら抱っこ、甘えてきたら抱っこ、のように抱っこ散歩が習慣化してしまうと、地面を歩くのを嫌がって歩かなくなることがあります。
③痛みや体の不調
痛みや体の不調などで歩きたくても歩けない状態の可能性もあります。
▼痛みや体の不調で歩けない例
・ハーネスや首輪が擦れて皮膚が痛い
・足裏に棘や砂利が刺さって痛い
・爪や関節に違和感や痛みがある
・加齢で疲れやすくなった
・暑くて呼吸がしづらい
上記のように、見た目で分かりにくい不調が隠れていることがあります。
昨日まで普通に歩いていても、その日はたまたま調子が悪い、疲れていて休憩を挟みたいということもあります。
特に年齢があがってくると、体力の衰えや関節の痛みなどで今までと同じペースや距離を歩くことが難しくなります。
立ち止まる、座り込む、歩くのを嫌がるといった行動は、わがままではなく異変が起きているというサインかもしれません。
少しでも違和感を覚えたら、すぐに愛犬の体をチェックし動物病院で相談しましょう。
④行きたくない、帰りたくない
特定の場所や状況で歩かなくなったり座り込んだりする場合、「行きたくない」「帰りたくない」と思っているのかもしれません。
▼玄関付近で歩かなくなる場合
・エレベーターや階段が苦手
・外に出るまでの流れで不安なことがある
・抱っこが嫌だった
▼帰り道で歩かなくなる場合
・まだ遊び足りない
・大好きな公園から離れたくない
・楽しい時間が終わるのが嫌
人にとっては「外に出る手順」や「そろそろ帰る時間」であっても、犬はその理由や都合が分からないので、帰る理由やメリットが見えません。
そのため散歩に行くたくない、帰りたくないという場合、歩かなくなったりその場に座り込むといった行動が見られます。
愛犬が散歩中に違う方向に歩こうとするのはなぜ?

座り込むだけでなく、急に別の方向に引っ張る場合もありますね。
愛犬が散歩中に別方向に行こうとするのは、なぜなのでしょうか。
考えられる理由を3つご紹介します。
▼愛犬が散歩中に違う方向に行く理由3つ
①その道や場所に嫌な思い出がある
②飼い主と愛犬の行きたい場所が異なる
③立ち止まって情報収集したい
①その道や場所に嫌な思い出がある
犬が特定の方向に進むのを強く嫌がる場合、そこには過去の嫌な記憶が残っていることがあります。
▼その道や場所に嫌な思い出がある例
・その道で他の犬に激しく吠えられた
・工事の大きな音が怖かった
・雷や強風など、怖い体験をした
こうした出来事が一度でもあると、犬の中では「その道=怖い場所」として強く記憶されます。
人は「もう終わったこと」「今日は大丈夫」と考えがちですが、犬はその景色や音などとセットで記憶するので、道を見るだけで不安がよみがえり、立ち止まってしまいます。
無理に引っ張ると、恐怖心が強まったり、飼い主さんへの信頼が揺らぐといった悪循環になりがちです。
散歩のルートは人が決めないといけない決まりはないので、安全に問題がなければ、愛犬が嫌がる道は避けてあげるとよいでしょう。
②飼い主と愛犬の行きたい場所が異なる
犬には「仲良しの犬に会えそうな場所」「ドッグランや公園に行く道」など、その場所に行きたい理由がちゃんとあります。
また「こっちが面白そう」「この匂い先を確かめたい」などその日の気分でルートを選ぶことも少なくありません。
それを頭ごなしに止められると、「なんでダメなの?」と納得できず、踏ん張って動かなくなります。
交通量が多い道や危険な場所はNGですが、安全が確保できる範囲であれば、たまには愛犬に道を選ばせるのもよいでしょう。
③立ち止まって情報収集したい
人から見ると何もない場所であっても、犬にとっては情報がぎっしり詰まった場所なのかもしれません。
犬は他の犬の残した匂いや人には聞こえない微かな音を頼りに情報収集を行います。
お散歩を「運動」と捉えると、立ち止まるたびにイライラしてしまいがちですが、犬にとっては気分転換と大切な情報収集の時間であり、匂いを嗅いだり周囲を観察することも、立派なお散歩の一部です。
愛犬が散歩中に歩かない、違う方向に行くときの対処法

これまでの内容で散歩中に歩かない、違う方向に歩き出すのは、犬のわがままではなく色々な理由があることがわかりました。
しかし、愛犬がこういった行動を取る場合、どのように対応をすればよいのでしょうか。
対処法を5つご紹介します。
対策① 愛犬の散歩ペースに合わせる
たまには愛犬のペースに合わせて散歩をしましょう。
その日の体調や気温、体の違和感によっても歩けるペースは変わるので、愛犬の様子を見ながらペースを決めるとよいでしょう。
対策② 嫌がる道は無理に進まない
「怖い」「嫌だ」と感じた道は、過去の体験と結びついて記憶されています。
無理に引っ張ると、不安や恐怖が強まり飼い主さんとの信頼関係にも影響します。
どうしても嫌がる場合は、無理に行かず、お互いが楽しく歩けるルートを一緒に決めましょう。
対策③ 愛犬に道を選ばせる
犬にも行きたい道や行きたい場所があります。
安全が確保できる範囲であれば、愛犬にルートを任せるのも良い選択です。
どうしても行けない方向がある場合は、ご褒美を使って誘導しましょう。
対策④ 立ち止まる時間も散歩の一部と考える
匂いや音など、愛犬には確認したい情報がたくさんあります。
急かさずに匂いチェックや探索をさせてあげましょう。
匂いチェックや探索は犬の気分転換になり、ストレスも軽減できます。
対策⑤ 体の不調を最優先で疑う
立ち止まる原因には、痛みなど身体的な不具合が隠れていることがあります。
心臓、呼吸、足腰、ハーネスの擦れ、肉球のケガなど異常がないかをチェックし、異変を感じたら、早めに動物病院へ相談をしましょう。
「散歩で歩かないのはわがままじゃない」忘れてはいけない飼い主の役割

飼い主の散歩での役割は、決めた距離を歩かせることではありません。
愛犬が安心して外を楽しめるようにサポートすることです。
例えば、疲れていそうなら休憩をする、嫌がったら別の道を選ぶ、匂いを嗅いでいるときは少し待ってあげるなど配慮してあげましょう。
ただ、愛犬の望むままに好き勝手させていると、人に迷惑をかけたり危険な目にあう可能性もあります。
愛犬が自由に感じられるようにしつつ、安全管理やマナーはしっかり守りましょう。
散歩は犬の気分転換の時間なので、歩かせるより一緒に外を楽しむ意識を持つことが大切です。

お散歩中の立ち止まりや方向転換には、必ず理由があります。
それはわがままではなく、愛犬なりの気持ちや体からのサインです。
そのサインを見落とさず、愛犬と外の時間を楽しむことが、飼い主にできるいちばんのサポートではないでしょうか。
<参考書籍>
愛犬との絆を深める散歩でマスターする犬のしつけ術 著者:田中雅織
動物看護のための動物行動学
著者/森裕司 武内ゆかり 監修/日本小動物獣医師会 動物看護師委員会
<画像元>
canva
・(元)認定動物看護師
・一般社団法人日本小動物獣医師会 動物診療助手
やんちゃなミックス犬とおっとりトイプードルと暮らす。
大学在学中に「病気になる前の予防が一番大事」と気づき、
ペットフードやペットサプリメントの会社に就職。
「食」に関するさまざまな知識を身につける。
愛犬を亡くしたときに
「もっと色んな情報を知っておけば」と感じた後悔を
「他の飼い主さんにはさせたくない」との思いから、
ライター活動を開始。
「勉強になった・信頼・わかりやすい」を目標に情報を発信しています。
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