皆さんは、日々の生活を送る中で頭部に円形脱毛症(別名:10円ハゲ)を発症した経験はありますか?
人の場合、多くはストレスが原因で頭髪の一部分に円形状の脱毛が出来てしまう症状を、一般的に円形脱毛(10円ハゲ)と言いますが、実はそんな円形脱毛症は、稀に犬にも見られることがあるのです。
今回は、犬の円形脱毛症について、考えられる主な原因や症状、対処法をご紹介します。
犬も円形脱毛って起こるの?

円形脱毛症と聞くと、一般には人が患う一過性のストレス性疾患というイメージが根強いと思います。
実際に経験したことがある人なら尚更、『円形脱毛が出来る=ストレスが原因』という認識を持っている方は多い事でしょう。
ただ犬の場合、犬種によっては年に2回『換毛期』という時期を経るため、その影響で「見た目の変化が見られるのでは?」と感じてしまうことも少なくないかもしれません。
しかし、例えばこれが『部分的に抜けている』、『明らかに毛が長い所と短い所がある』といった場合には、それらの症状は犬が迎える『換毛期』という自然な生理現象ではなく、何らかのストレスが関係した円形脱毛の可能性が考えられます。
また、それに加えて脱毛以外に赤みの有無や痒がっている様子の有無によっては、ストレスが関係する円形脱毛ではなく、病気の可能性を疑う必要があるでしょう。
犬が患う円形脱毛症の見た目の中には、人が患う円形脱毛症とは違って明確に皮膚疾患が関係するものもあります。
それこそ、環境中のもの、食物によるもの、外部寄生虫、真菌(カビ類)、ホルモンバランスによるものなど様々な要因が存在するため、人のように犬の円形脱毛も『ストレスが原因』との決めつけで軽く考えないように注意しましょう。
犬で見られる円形脱毛の主な原因と症状とは?

犬に円形脱毛症が見られた時には、いくつかの原因が考えられます。
以下でその原因を確認してみましょう。
▼【犬で円形脱毛が見られる時の原因】
・ストレス
・膿皮症
・急性湿疹(ホットスポット)
・皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)
ストレス
円形脱毛症になる原因の中で最も一般的に考えられているストレスは、犬にも関係してきます。
特に引越しや家族構成の変化、構い過ぎ、または構わなさ過ぎ、運動不足といった様々な要因によって、人にも起こる円形脱毛症状が起こることがあります。
筆者の愛犬つむぎも明らかな円形脱毛症が見られ、被毛が生えている部分と生えていない部分の境目が明瞭な状態になってしまったことがあります。
▲ぱっと見でも分かるほど被毛には生えている部分とそうでない部分の違いが見られます。(令和7年11月5日撮影)
愛犬の場合痒がってもおらずハッキリとした原因は不明でしたが、このような脱毛は、多くはストレスを原因として発症する可能性が高いと思われます。
しかし、例えばこの症状が左右対称に至る所に見られていた時には、それはストレスだけではなく内分泌性疾患(ホルモン疾患)、もしくは季節性脱毛症などが関係している可能性もあるため、注意しましょう。
膿皮症
細菌感染が原因で皮膚表面の赤みや痒み、色素増加が見られる皮膚疾患を膿皮症と言いますが、この膿皮症でも、円形脱毛のような脱毛症が見られることがあります。
膿皮症は主に、表皮性膿皮症と深在性膿皮症という2種類に区分され、このうち表皮性膿皮症では、赤みや痒み、色素増加の他に、表皮小環(ひょうひしょうかん)という円形の鱗屑が見られることがあります。
一見すると見た目は円形脱毛症のように見えるかもしれませんが、膿皮症は細菌感染で発症する疾患のため、痒みや赤みを伴います。
見つけた時には出来るだけ早急に動物病院を受診するよう心掛けましょう。
急性湿疹(ホットスポット)
急性湿疹とは、膿皮症と同じく細菌感染によって発症する急性の皮膚疾患です。
梅雨から夏場にかけての高温多湿時期に発症しやすく、強い痒みから急に皮膚を齧ったり、舐め壊したりすることで円形脱毛のような皮膚病変を生じさせてしまうことがあります。
急性湿疹は強い痒みを伴うために、このような状態に一晩で悪化させてしまうことがあるため、早期の治療を心掛けましょう。
皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)
皮膚糸状菌(カビ)の感染によって起こる皮膚糸状菌症は、全身どこにでもできる皮膚疾患の一つです。
特に顔面、口周り、耳周り、足の指に発症することが多く、典型的な円形脱毛が見られるようになります。
皮膚糸状菌症は、円形脱毛の周辺に発赤が見られることから、通称リング―ワームと呼ばれ、この症状は犬を介して人にも感染する人畜共通感染症のため、見た目が円形脱毛だったとしても、その周りに赤みなどが見られるような場合には、皮膚糸状菌症の可能性が考えられます。
見つけた際には、患部には出来るだけ触れないように動物病院を受診することが大切です。
犬に円形脱毛が見られた時の対処法

もしも大切な愛犬に、ある日突然見覚えのない脱毛が見られた時には、まずは落ち着いてその状態をしっかり観察しましょう。
そして、その状態が例えば皮膚病変を伴わない円形脱毛の場合であれば、ストレスの可能性を鑑み、原因の特定・解消に努めてあげてください。
けれど、もしその症状に発赤や痒み、色素沈着などが見られるようなら、以下の方法で症状の改善を図りましょう。
▼【円形脱毛が見られた時の対処法】
・獣医師からの処方薬の活用
・定期的なシャンプーやブラッシング
・生活環境の清掃
・外部寄生虫の予防
・免疫力の向上
また、被毛の主成分であるケラチン生成に必要なアミノ酸は、良質なタンパク質が必要不可欠です。意識的に摂らせることで、被毛の発育を促してあげると良いでしょう。
皮膚病変を伴わない犬の円形脱毛は、本来極めて稀とされているようです。
2001(平成13)年に発表された『ミニチュア・ダックスフンドに見られた円形脱毛症の一例』という文献の時点では、日本国内による発症例は確認されていなかったのだとか。
しかし、国外ではダックスフンド、雑種、ビズラ、ドーベルマン、ジャーマンシェパードなど、比較的皮膚疾患に罹りやすい犬種での発症は認められていました。
また、こうした円形脱毛は、その発症から3年~5年以内で自然治癒することが多いということも、示唆されていました。
けれど、筆者の愛犬つむぎのように何の前触れもなく、ふと体に目を向けたら被毛の一部分に明らかな脱毛が見られたことがあるように、ある日突然、私たちも知らない愛犬のストレスが円形脱毛となって表れることがあるかもしれません。
犬の円形脱毛症は、こういったストレスだけが原因で起こるという訳でもないため、ハッキリとした症状が分からないような時には、赤みや痒みを伴っていなくても、迷わず動物病院を受診しましょう。
まとめ

いかがでしたか?
人にとっての円形脱毛症は、そのほとんどが過度なストレスによるものです。しかし、犬にとっての円形脱毛症は、症状や状態の程度によって、ストレスも関係すれば、皮膚疾患に関係する時もあります。
犬の皮膚疾患が関係して起こっている円形脱毛症の場合、早期発見・早期治療が重要なカギとなります。
特に皮膚疾患を患いやすい犬種については、そうでない犬種と比べると、円形脱毛症を発症しやすい傾向にあるので、なるべく定期的なケアを忘れないように気を付けてあげてくださいね。
<参考サイト>
ミニチュア・ダックスフンドにみられた円形脱毛症の1例|獸醫皮膚科臨床 VOL.7 No.1 2001
>https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjvd95/7/1/7_4/_pdf/-char/ja
犬の円形脱毛|考えられる病気や治療法について獣医師が解説|サーカス動物病院
>https://circus-ah.com/wp/archives/4302
<画像元>
photoAC
筆者提供
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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