毎年4月~6月になると訪れる狂犬病予防ワクチン接種。
愛犬自身はもちろんですが、飼い主さんにおいても憂鬱な気持ちになる方は多いと思います。それもそのはず。
日本において犬の狂犬病予防ワクチン接種は義務化されているため、絶対必要だからです。しかし、なぜ犬だけ義務化なのでしょうか?
今回は、狂犬病予防ワクチン接種のおさらいから清浄国に関する現状、2027(令和9)年以降に施行が予定されている法改正などについてもご紹介します。
そもそも狂犬病とは?清浄国はどこ?

私たちが良く知る狂犬病とは、一般的にモノネガウイルス目ラブドウイルス科リッサウイルス属に属するウイルスの一つを指します。
そして現在においても明確な治療法はなく、一度発症すると100%の確率で死に至るとされています。
一般的にリッサウイルスには、主に7つほどの遺伝子型が確認されていて、その中の狂犬病ウイルスにおける保有動物、分布域は以下のような状況となっています。
▽『リッサウイルス属に分類される遺伝子型・名称・保有動物・分布域』
狂犬病ウイルスの保有動物の多くは、上記の画像でも確認できるようにイヌ、キツネ、コヨーテ、タヌキなど、イヌ科に分類される動物です。
といっても、狂犬病ウイルス自体は全ての哺乳動物に感受性があるため、イヌ科だけに気を付けておけば問題ないという訳でもありません。ただ後述する人への影響については、犬が最も重要な動物となります。
また、画像内での分布域においては『世界中』とされている狂犬病ウイルスですが、現在は以下のような分布域となっています。
▽『狂犬病ウイルスの分布域』
日本では、犬と人においては1956(昭和31)年に、猫においては1957(昭和32)年の発症を最後に見られなくなり、2026年の現在も、日本・アイスランド・オーストラリア・ニュージーランド・フィジー諸国・ハワイ・グアム・アイルランド・スウェーデン (英国・ノルウェーの一部)については、清浄国とされています。
ただし、日本自体の発症はないにしても、1970(昭和45)年にネパールからの帰国者一名、2006(平成18)年にフィリピンからの帰国者一名、2020(令和2)年にフィリピンからの入国者一名は、それぞれ狂犬病を発症し、後に死亡した事例が報告されているため、現在においても油断の出来ない状況が続いているのが現状です。
犬の狂犬病予防ワクチンが絶対なのはなぜ?

世界的に恐れられ、現在も一度発症してしまったら明確な治療法もなく、ほぼ100%の致死率で犬を含むすべての哺乳動物を死に至らしめる狂犬病。
上記でもお伝えしたように、1957(昭和32)年の猫の発症を最後に、国内での発症は見られなくなりました。しかし、それにもかかわらず2026年になった現在も犬に対する狂犬病予防ワクチン接種が義務化されたままなのは、一体なぜなのでしょうか?
それは、人が狂犬病ウイルスに感染する事例の99%が、犬からの咬みつきによるものだと言われているためです。
大分大学医学部微生物学大分大学グローカル感染症研究センターの西園晃氏が、令和6年度にて開催した動物由来感染症対策技術研修会の中で公表した『動物咬傷を報告した日本人渡航者の内訳』においても、咬傷動物の60.5%以上が犬による咬傷で、残りが猫(15.8%)、サル(15.3%)、コウモリ(1.1%)、その他(7.3%)という結果が報告されました。先に述べた海外からの帰国者における死亡例も、全てが犬からの咬傷事故による発症・死亡した事例です。
▽『清浄後に日本で見られた狂犬病発症事例の詳細』
いずれの事例も現地における曝露後のワクチン接種はされずに、その後死亡したことから最も人との関わりが深く、狂犬病ウイルスの保有を最も多く持ちやすい犬においては、予防注射の定期接種が重要となっているのです。
ちなみに、一般的に狂犬病予防ワクチンは不活化ワクチンといって、死滅(不活化)させたウイルスを基に、そのウイルスに対する免疫を付けさせるための成分のみを取り出して精製されます。ただしその代わり不活化ワクチンは、副作用は起こりにくいとされている一方、持続期間が短く定期的な継続接種を必要とします。
以下では、狂犬病予防に関する内容を解説しています。詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事もご覧になってみてくださいね。
▼【合わせて読みたい!こちらの記事もオススメです】
4月~6月は狂犬病予防注射月間!犬を迎えたら知っておきたい狂犬病予防法とは?
>https://www.inutome.jp/c/column_7-124-40497.html
2027年以降に狂犬病予防法施行規則の何が変わる?

それでは、これだけ危険な狂犬病に対して、2027(令和9)年度以降に改正予定の狂犬病予防法施行規則は、具体的に何が変わるのでしょうか?
狂犬病予防法施行規則の現行制度では
“犬の所有者はその犬について、狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせなければならず、市町村長は予防注射を受けた犬の所有者には注射済票を交付しなければならない”とし、さらに、“犬の所有者が予防注射を受けさせる時期は、毎年4月1日から6月30日までの間に受けさせること”
とされています。
しかし現在の状況を、2024(令和6)年12月19日~20日までの間に都道府県及び市区町村にて狂犬病予防注射時期の見直しアンケート調査を行ったところ、1,789の自治体の内、1,438(回答率80%)の自治体の約7割が、通年接種を可能とすることに賛成したとする結果が得られたのでした。
つまり、これまで4月1日から6月30日までの期間中に、狂犬病予防注射を実施しなければ法違反となり得た状況が、この通年接種法案を2027(令和9)年4月1日に施行することで、是正することが出来るようになるということです。
この法改正の目的は、それまで事情があって期間内に接種が出来なかった人への対応や集団接種の混雑緩和などの利便性を図るためとされています。
飼い主さん自身の意識改革の重要性

しかし、例え上記のような法改正がなされても、飼い主さん自身の狂犬病に対する意識が変わらなければ、元も子もありません。
というのも、2024(令和6)年2月29日から3月4日までに、うちの子保険などのペット保険を提供しているアイペット損害保険株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役 執行役員社長:安田敦子氏)が、犬飼養者1,000人を対象とした愛犬を守るための行動調査では、ペット保険加入者及び未加入者合わせて平均86%の人が、定期的な狂犬病予防ワクチンを受けると回答した一方、やはりごく稀に出てしまうワクチンによる副作用を敬遠する飼い主さんは多いのか、2024年時点でも接種率100%には至っていないという結果が報告されているためです。
▽『愛犬の健康を守るための行動調査|アイペット損害保険株式会社調べ』
確かにワクチンは、状況によってはアナフィラキシーショックなどの急激なアレルギー反応を起こして、救急を要する事態に発展してしまうことも珍しくないため、敬遠する気持ちは筆者も十分理解できます。筆者の経験上でも、老犬になっても変わらず狂犬病予防注射を接種したお寺にいたワンコが、因果関係があるかまでは分かりませんが、ワクチンの接種後死亡してしまった経緯を知っています。
しかし、それでも狂犬病の発症は、ワクチン接種で副作用を起こしてしまう確率以上に危険な病気です。
愛犬に特段受けられない事情がある場合や獣医さんからのドクターストップがかけられている場合を除いては、年に一度の狂犬病予防は行なうよう心掛けましょう。
まとめ

日本においては清浄国でも、いまだ多くの国では発症リスクの高い狂犬病。
その狂犬病を予防するためには、やはり毎年定期的な予防接種を必要とせざるを得ませんが、それが結果的に愛犬を守ることに繋がります。いずれ多くの国が清浄国となったのなら、日本における狂犬病予防接種の在り方も、何か変わるのかもしれませんが、現時点においては毎年の予防接種を欠かさず行うことで、愛犬の健康は飼い主さんが守れるように日常的な健康管理と共に心掛けてあげてください。
<参考サイト>
令和6年度動物由来感染症対策技術研修会|狂犬病を取り巻く内外の現況|大分大学医学部微生物学大分大学グローカル感染症研究センター|西園 晃
>https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001340224.pdf
【狂犬病ワクチン接種率は約86%に留まる】|愛犬の健康を守るための行動調査|アイペット損害保険株式会社
>https://www.ipet-ins.com/info/37099/
狂犬病予防法に基づく予防注射時期の見直しについて|厚生労働省
>https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001594793.pdf
<画像元>
photoAC
Canva
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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