冬が近づくと恋しくなるホットカーペットやこたつ、ヒーターなどは愛犬にも大好評なことが多い暖房器具の一つですよね。
中でもこたつやヒーターは、「ヤケドしないかな?」と心配になるくらい近い距離で暖まる子は多いため、心配になってしまう種の一つでもあると思います。
そこで今回は、そんな冬に大活躍する暖房器具で注意したいペットの低温ヤケドについて、その定義や熱傷度合い、応急処置や予防策などをご紹介します。
<目次>
低温ヤケドの定義とは?

一般的に低温ヤケドと言われるヤケドは、おおよそ44℃~50℃程度の比較的低い温度に長時間触れていることで発生するヤケドのことを指します。
このようなヤケドは、基本的に熱湯や熱された油などが掛かって瞬時に「熱い!」と感じるものではなく、「じわじわと浸潤するようなヤケド」なのが大きな特徴です。
また低温ヤケドは、通常のヤケドよりも治りが遅く、痛みが長続きする特徴も持ち合わせています。
以前筆者は、揚げ物をし終わった油を片付けようとした時にウッカリ零し、自身の手にヤケドを負ったことがあります。

▲利き手の左手を火傷した時の画像。包帯グルグル巻きの状態で当時の2代目そらが心配して駆け寄ってきてくれた時のものです。
この時のヤケドは当然高温で負ったヤケドだったため、瞬間的な熱さと痛みを伴って、すぐに冷水での応急処置、病院での処置をしてもらいました。
しばらくは痛みとヒリヒリ感が続きましたが、2週間もすれば、その症状もヤケド痕も気にならなくなったのを覚えています。
しかし低温ヤケドの場合は、こうした瞬間的な熱さや痛みはそもそもなく、気が付いたらヤケドが進行していたという事態が珍しくありません。
それこそ犬の場合には、その豊富な被毛に覆われていることで、皮膚への熱さが感じにくく、知らぬ間にヤケドが進行してしまっていることも少なくはないため、例え人にとって「少しぬるい」と感じる温度であったとしても、犬では長時間熱に触れ続けることが低温ヤケドに繋がってしまう恐れがあることを覚えておきましょう。
低温ヤケドで起こる熱傷度合い
低温ヤケドは、その熱傷度合いによって症状の程度に違いが生じます。
以下でその熱傷度合いについて詳しい内容を確認していきましょう。
熱傷度Ⅰ
熱傷度がⅠ度の場合、多くは軽症のヤケドと診断されます。
大体44℃の熱に3~4時間程度当たっていた場合、皮膚に対して赤みやヒリヒリとした痛みを伴う程度のものがこれに当たります。
しかし症状が軽度であれば、痕は残らず赤みやヒリヒリも数日で落ち着くことが多い状態です。
熱傷度Ⅱ(浅め)
熱傷度がⅡ度(浅め)の場合、この時にはその熱は真皮層にまでヤケドが進行してしまっているため、水膨れやひどい痛みを伴います。
大体46℃で一時間程度同じ体勢のままだと、この状態になる可能性が高いため、注意しましょう。また、完治するまでには1~2週間ほどかかります。
熱傷度Ⅱ(深め)
熱傷度がⅡ度(深め)の場合、皮下組織までダメージが及んでいる状態です。
皮膚の壊死や神経の損傷を伴っている場合には、知覚や痛みが感じづらく、治療にはおおよそ1カ月程度必要となり、痕も残る可能性が高い重症度合いのヤケドです。
熱傷度Ⅲ
熱傷度がⅢ度の場合、ヤケドは皮下組織にまで及び、骨や筋肉などのより深い部分が損傷してしまっている状態が高いです。
大体50℃の熱に30分程度当たっていると、この状態になる場合があり、ここまでくると神経の損傷によって知覚や痛みはほとんど感じられなくなります。
基本的に治療には1カ月以上の期間を要し、皮膚もケロイド状になる可能性が高いため、状況次第では皮膚移植手術が必要になることがあります。
どんな暖房器具が危険?犬の低温ヤケドの原因

それでは、ここからは犬が冬場に低温ヤケドをしてしまう主な原因を見ていきましょう。
犬が低温ヤケドをしてしまいやすい主な原因となる暖房器具の種類は、以下の通りです。
ホットカーペット
床に直接敷くホットカーペットは、広範囲を暖められる上、犬も長時間寛げる暖房器具の一つです。
ただ、主に人が使うホットカーペットの一般的な上限温度は、『強』で約45℃前後と言われているため、丁度低温ヤケドをしてしまいやすい温度となります。
寒さが増すと私たち人の場合、どうしても設定温度を上げて暖まりたくなってしまう傾向が強いですが、愛犬が人用に設計されたホットカーペットで寛ぎたがる際には、最高でも35℃前後の熱さとされている『中』に設定しましょう。または、犬専用に販売されているペット用ホットカーペットを別途用意して、長時間その場にいても平気な空間を作ってあげると良いでしょう。
湯たんぽ・電気カイロ
湯たんぽや電気カイロは、愛犬にお留守番をさせる時に非常に便利ですが、局所的な低温ヤケドに注意が必要な暖房器具の一つでもあります。
湯たんぽは、使用する素材によってその保温効果が異なり、温度が44℃以上の持続効果を調べた実験では、ゴム製湯たんぽで約2時間40分、プラスティック製湯たんぽで約4時間5分、金属製湯たんぽで約4時間という実験データが報告されています。
そのため、愛犬に湯たんぽや電気カイロを使用する際には、湯たんぽなら使用する素材の選定はもちろんのこと、入れるお湯の温度に注意し、電気カイロなら設定する温度に注意することが大切です。
こたつ
家族団らんで暖まれるイメージがあるこたつも、設定温度を誤ると低温ヤケドになってしまう危険性がある暖房器具の一つです。
こたつの上限温度は使う製品によって違いますが、一般的には3段階の温度調整機能が備わっているものがほとんどで、その多くが約50℃~80℃を目安としていると言われています。
ただでさえ熱くなりやすいこたつですが、特にこたつの内部に潜って長時間暖まりたがる愛犬の場合は、定期的に様子を見てあげるよう注意しましょう。
愛犬が低温ヤケドをした時の応急処置方法

愛犬が暖房器具で長時間暖まり、その結果低温ヤケドが疑われるような場合には、何を置いてもまずは冷やすことを優先しましょう。
愛犬を冷やす際には、氷などは使わずに水道水で15~20分患部を冷やし続けます。その間に動物病院へ連絡し、次の指示を仰ぐと共に病院へと向かいましょう。
この際、熱傷した場所に無闇に触れたり、軟膏などを塗ったりするのはかえって症状を悪化させる可能性があるためNGです。清潔なガーゼやタオルなどで愛犬の体を覆って病院を受診しましょう。
また、ヤケドした部分を気にして愛犬が患部を舐めようとする場合には、エリザベスカラーを一時的にでも着けて、口腔内に存在する雑菌の侵入を防ぐことも大切です。
犬の低温ヤケドの場合、上記でも述べた通り被毛で覆われていることで、その重症度は分かりづらかったり、発見しづらかったりします。
しかし、例えば愛犬自身が同じ場所をずっと気にして舐めていたり、触られるのを嫌がったり、またはホットカーペットやこたつで寝ている愛犬の被毛が焦げ臭かったりした時には、それはもしかしたら低温ヤケドをしてしまっているサインかもしれません。
そうした場合は念のため、動物病院へ連絡しましょう。
愛犬が低温ヤケドをしないための予防策

愛犬が低温ヤケドをしないための最も安全な予防策は、やはりエアコンの暖房を使いつつ、状況に応じてブランケットなどを使い分けることです。
ただ、それでは乾燥や電気代などが気になるという場合は、ヒーターやストーブでは、愛犬が一定の距離以上に近寄れないようなペットガードなどの設置の検討をしましょう。
また繰り返しにはなりますが、ホットカーペットでは上限温度の設定またはペット用ホットカーペットの用意を、こたつでは定期的な愛犬の様子を怠らないことで、低温ヤケドにならないよう気を付けましょう。
特にシニア犬の場合、熱さへの感覚というのは年齢を重ねることで鈍りやすくなるため、飼い主さん自身が「熱いなぁ…」と感じ始めた頃には、既に広範囲にヤケドを負っていたということもあり得ることです。
それに加えシニア犬は、一度横になるとなかなか起き上がらなかったり、水分補給の感覚が幼犬や成犬よりも長かったりすることも珍しくありません。
愛犬が低温ヤケドをしないための予防策は、愛犬自身の状況観察と暖房器具の設定温度が何よりも重要です。
ご自宅にある暖房器具の上限温度などを普段から高めに設定しているような場合には、今一度その設定温度を見直すよう注意しましょう。
まとめ

今回は、冬場の暖房器具による犬の低温ヤケドについてご紹介しました。
低温ヤケドは、44℃~50℃前後の温度に長時間居続けることで起こりますが、犬自身は全身被毛に覆われているため、熱さに気付きにくく重症化しやすい動物です。
そのため、そのような重症化を防ぐためにも、愛犬の様子は定期的に確認してあげるよう、心掛けてあげてください。
<参考書籍>
決定版 犬と一緒に生き残る 防災BOOK
<参考サイト>
【獣医師が解説】犬・猫の低温やけど完全ガイド|正しい温度と予防法
>https://x.gd/k7eUO
<画像元>
photoAC
また、生前疾患の多かったシェットランド・シープドッグをキッカケに取得した愛玩動物飼養管理士などの様々な資格の知識を生かし、皆様に役立つような記事を提供、執筆出来ればと思っております。
何卒、よろしくお願い致します。
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